伊藤忠、中国事業で損失先行 CITIC株1400億円減損

伊藤忠商事は2日、10%を出資する中国国有企業、中国中信集団(CITIC)の株式を減損処理し、1433億円の損失を計上したと発表した。CITICへの投資は中国ビジネスの飛躍的な拡大を目指して6000億円を投じた戦略案件だが、3年たった今も共同事業の成果は乏しい。稼ぐ方程式が見えないうちにつまずいた格好だ。
鉢村剛最高財務責任者(CFO)は2018年4~9月期の連結決算を発表した同日の記者会見で「CITICの決算は順調だが株価の低迷が続く可能性があり、保守的な対応をした」と説明した。
CITICの株価は11~12香港ドルと伊藤忠の取得価格(13.8香港ドル)を下回って推移している。「金融株とみなされ、不良債権を抱えているのではないかなどの不安が出ている」(鉢村氏)。他の幹部は「今後、追加損失が出るようなことはない」という。
伊藤忠は15年にCITICに出資して資本、業務の両面で提携した。具体的な結果はまだない。野村証券の成田康浩アナリストは「提携当初に協業すると言っていた話が全く出てきていない」と指摘する。
共同で取り組む事業は現時点で主に2つある。ドイツでの洋上風力発電事業と、共同出資する中国でのアパレル事業だ。伊藤忠の連結業績にどの程度の利益貢献をしているのかは非公表だが、限定的とみられる。
新たな展開に向けた準備もしている。中国での病院経営に向けて市場調査を16年に始めた。17年には日本の電子商取引(EC)サイト運営会社に出資し、CITICとの協業を検討中だ。
人材面では中国語人材の育成を急ぐ。これまでに総合職の3割に相当する1000人が中国語検定試験に合格した。地盤固めは進みつつある。
鉢村氏は2日の決算発表でCITICとの協業状況について「スローだが失敗の投資だとは思っていない。5年、10年のタームで判断していくべきだ」と話した。
背景には足元の業績が好調なことがありそうだ。19年3月期に想定する通期の純利益は5000億円。期初予想に比べ500億円高い水準だ。ユニー・ファミリマートホールディングスの子会社化に伴う株式評価益が1412億円発生したため、CITICの減損と相殺する形となった。損失を吸収する余裕があるうちに成果を出せるかどうかが問われる。
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