アルツハイマー薬、世界で約100種類が開発中

日米欧の製薬3団体は2日、都内で共同記者会見を開き、アルツハイマー病治療薬の世界での開発状況を発表した。開発の最終段階と中間段階を合わせ、約100種類の薬のタネの開発が進んでいる。日本製薬工業協会の中山譲治会長(第一三共会長)は会見で「疾病の治療で労働生産性が高まり、税収が増え、医療費負担の改善などにつながる」と強調した。

米イーライ・リリーで認知症領域の創薬責任者を務めるマイケル・L・ハットン副社長が開発状況を報告した。世界では臨床試験(治験)の最終段階にあたるフェーズ3の新薬候補が31種類あり、中期段階のフェーズ2には68種類があるという。
ハットン氏は「アルツハイマー病薬の将来は明るい」と述べた。約100種類の中から画期的な新薬が生まれることが期待されている。
認知症の患者は2015年の段階で世界に4700万人が存在し、50年には1億3200万人に達すると予想されている。アルツハイマー病薬の開発は失敗続きで、進行の抑制や根本治療が可能な薬はまだ存在しない。
開発中の新薬候補「BAN2401」で認知症の進行を抑える効果を示したエーザイからは、木村禎治執行役が登壇した。「おまえら駄目じゃないかと何度も言われたが、ようやく光明が見えてきた」と苦しかった時期の心情を吐露した。
中山会長は同日、製薬3団体が合同で国会議員への朝食勉強会を開くなど、積極的なロビー活動を始めたことも明らかにした。医療費を抑えるために薬価(公定価格)を引き下げる議論が広がるなかで、自分たちの主張を国に届ける狙いだ。
製薬各社はこれまで、薬価に代表される特殊な業界事情を広く説明する取り組みをしてこなかった。厳しい薬価引き下げの背景には説明不足もあると反省し、各社の現状や主張を各方面へ積極的に伝えていく構えだ。
(野村和博)