金融庁、ICOに規制検討 透明性向上で投資家保護
金融庁は仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)を規制する検討に入った。配当や利子を出し、投資とみなせるICOを広く金融商品取引法の規制対象にすることを視野に入れる。ずさんな事業計画に基づいた詐欺まがいの案件も相次いでおり、投資家の保護を徹底する。

ICOは企業や団体が「トークン」と呼ばれるデジタル権利証を発行することで投資家から広く資金を募る。株式公開のような厳しい審査がないため、スタートアップ企業が資金を調達しやすくなると期待される。一方、事業計画がずさんで詐欺まがいの案件も目立つ。世界で2千種類ある仮想通貨にはこうしたトークンが多くあり、値動きも激しい。値上がりを期待した投機を助長しているとの批判も根強い。
金融庁は1日、有識者で構成する「仮想通貨交換業等に関する研究会」でICOの問題と規制に向けた論点を議論した。念頭に置くのは、投資家が配当や利子を得られる投資型トークンへの規制だ。現在も日本円などの法定通貨で購入すれば金商法の規制対象になりうるが、第三者による事業計画の確認など情報開示が不十分で規制は緩い。 投資とみなせるICOに対しては販売する業者や投資家の制限を含めた新たな規制を検討する。資金調達でなく、単にモノやサービスを買う決済手段としてトークンを使う場合は投資商品にあたらないとして、規制を区別する方針だ。
1日の研究会では「ICOも株式公開と同じ機能やリスクを持つなら同一の規制をかけるべきだ」との意見が出た。研究会メンバーで麗沢大学の中島真志教授は「世界のICOの8割が詐欺との報告もある。値上がりを期待した買いで投機をあおっている」と指摘した。
ICOへの規制強化は世界的な流れだ。米国では米証券取引委員会(SEC)が一部のトークンが有価証券にあたるとの見解を示し、中国や韓国ではICOを禁止した。情報サイトのコインデスクによると、ICOを使った資金調達額は2017年に約54億ドル(約6100億円)。18年は7月末までに約142億ドルと3倍近くに急増し、規制が強まるなかでも活発だ。