/

成果を出せば全員昇給 メルカリが挑む絶対評価制度

メルカリの唐沢俊輔執行役員

メルカリの唐沢俊輔執行役員

フリーマーケットアプリで急成長し、2018年6月に東証マザーズ上場を果たしたメルカリは、ルールをあまり作らない自由な組織風土で知られる。1月には人事制度を刷新し、昇給幅に上限を設けない珍しい制度を導入した。日本マクドナルドのマーケターからメルカリの人事担当に転身した唐沢俊輔執行役員に制度の狙いを聞いた。

評価される人が納得できる説明が必要

――新しい「無制限昇給制」はどんな仕組みですか。

「新卒だから年収500万円と決めるのでなく、年収800万円の先輩と同じだけ仕事をした人には800万円支払うべきだというのが基本です。ほかの会社では、給料の原資が決まっていて、ある人の給料を5%上げるために別の人を1%にするといった相対的な決め方をします。当社は5%アップにふさわしい成果を出した人は全員上げたいと考えています」

「結果を求める絶対評価なので、ある意味厳しいです。ただ、昇給幅ゼロが悪い評価とは思いません。前年と同じぐらいの結果を出し、同じ実力だったら給料が変わらないというだけの話です。プロ野球選手の年俸が現状維持だとしても成績が悪かったとは思わないですよね」

――成果を評価する管理職は大変です。

「闇雲に上げ下げしたり、おかしな評価をしたりということはないと、そこはマネジャーを信用しています。ただ、現場には『無制限は怖い』『どうやって評価したらいいのかわからない』という戸惑いもあるでしょう。評価する人によって甘い、辛いがブレてもいけない。そこで『評価キャリブレーション(調整)』という仕組みを導入しています」

「たとえば、ある部門にマネジャーが6人いたら、全員で評価の『目線合わせ』をします。『この人が年収700万円なら、こっちはもう少し成果を出しているので720万円じゃないか』といった議論をして、擦り合わせていくのです。マネジャーは評価のために1~2日、合宿することもあります。手間はかかりますが、評価される人が納得するフィードバックが必要です。きちんと説明できるようにしないといけないのです」

――評価の基準は。

「軸は二つあります。1つはOKR(米グーグルなどが採用する、企業全体から部署、チーム、社員の目標をつなげて管理する仕組み)の目標の達成度合い、もう一つはバリュー(全社共通の価値観)に沿った行動をしているか、です。この2つで総合的に評価しています」

性善説の裏に「自分で考えて動け」の文化

――性善説の企業文化だそうですね。

成長には「自分で考え、自分で動く」必要がある

「みんな会社にとってプラスになることしかしないと考え、あまりルールをつくらないようにしています。多くのルールで縛ると、考えない組織になってしまう。メルカリにとって何が最適か、社員の育成・成長に何が必要かを一人ひとりが考え続けるのが大事です」

「私が以前働いていたマクドナルドは、いわばマニュアルの会社なので対極的ですよね。いい悪いではなくて事業モデルの違いです。マクドナルドは国内に3000店もあって、高校生から70代まで働いています。誰がやっても同じ味、同じサービスにしないといけない。メルカリは新しいアイデアが現場からどんどん生まれないといけない事業です。テクノロジーの進化も速いので、自由を与えて動いてもらう方が成長するし、新しいものが生まれやすい」

「17年秋に入社する前、小泉文明社長と2~3回会いましたが、仕事は『任せるから、自分で考えて』と言われました。何をしたいか聞かれて『一緒に経営やりたいです』と言ったら、3日後に『社長室つくったからおいで』って(笑)。社長室で何をするのか聞いたら『自分で考えて、好きなことやって』と。自分で考えて自分で動けないとダメなんだと実感しました」

会社の「成長痛」対応、人事への道開く

――入社してから何をしてきましたか。

「まず社内のマネジャー以上の人、当時で50人くらいと面談しました。そこでメルカリの『成長痛』が見えました。『組織が大きくなり、経営陣が遠くなっている』『一人ひとりが大事というが、本当に把握できているのか』という声があったのです」

「それで経営陣と現場のハブになろうと思いました。経営陣からの一方通行の説明が多かった全社の定例会議を双方向で議論できる場にしたり、経営会議に現場への伝え方を進言したりしました。半年ほど、そんなことをしているうちに、人事をやってみないかと打診されました」

――「ピープル&カルチャー」というグループを設立しましたね。

「人事や労務、総務の機能をひとまとめにしました。どんどん採用数も増えて、組織が目まぐるしく変わるなかで、人に関わるプロセスを1カ所で統括する必要が出てきたというのが背景です」

10月に新卒の社員50人を迎えたメルカリ。30人以上がインド出身だ

「メルカリらしさを守りながら、一人ひとりが適材適所で成長できる組織をつくりたいと考えています。新しい人事制度でも基準やガイドラインを明確にし、社員の納得感を重視しました。同時にコーポレート・ソリューションズ・エンジニアリングという技術者のチームもつくりました。独自の制度が多いので、人事データベースや評価システムなどの社内システムを自前でつくっています」

人事、マーケティングに通じる

――マーケティング畑の経験は人事でも生きますか。

「人事は、社員の考えをつかみ、モチベーションを上げて成果を出しやすくする方法を考えます。人を動かすという意味で、マーケターが顧客と向き合うのに似ています」

「メルカリを働く職場としてブランディングしたいと考えています。『メルカン』という自社メディアで、どういう人が、どんな考えを持って働いているのか発信しているのも、その一環です。我々人事の思いも結構突っ込んだところまでオープンにしています。当社の文化に合う人を採用できれば、社員が3000人、5000人と増えてもブレないはずです」

――今後の課題は。

「米国や英国に進出していますが、社内のグローバル化も進めていきたい。世界のテックカンパニーになりたいので。10月にインドから新卒が30人以上入社するなど、外国籍の社員も増えています。言葉の壁もありますし、そういうメンバーが増えても働きやすい組織にしていくのが次の課題です」

(安田亜紀代)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン