コメ、震災契機にブランド化 長野県栄村
信越巡って発見

2018/10/31 22:00
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2011年3月12日。東日本大震災の翌日、最大震度6強の地震が長野県北部の栄村を襲った。中でも小滝地区は被害が大きかったが、近年はコメのブランド化などを進め、復興を遂げている。地区内の全13戸が参加する合同会社、小滝プラスを15年に設立。都内の会社と連携してワインボトルに詰めたコメを高価格で販売している。古民家を活用した交流施設も設け、震災前を超えるにぎわいを見せている。

ワインボトルに詰めたコメで集落の振興を図っている

「集落が存続できるかできないかというところから始まった」。小滝プラスの樋口正幸代表は、震災当時を振り返る。住宅などが甚大な被害を受けたほか、水田の7割が被災で作付けできなくなった。全員がばらばらに避難し17戸だった戸数は13戸に減った。

それでも、残った地区住民は「300年後まで集落を引き継ぎたい」という目標を立てた。そのための手段の1つが、コメのブランド化だ。小滝地区は全国でも有名な新潟県魚沼地域に近く環境条件が似ており、良質なコメがとれるという。

当時は米価が下がっており、JAだけに卸していては収入も少なかった。まずは「小滝米」という名称で、物産展などへの出品を始めた。品種はコシヒカリだが、小滝の知名度も低く、思うように売れない時期が続いた。

転機は14年。小滝地区を訪れた子供服のギンザのサエグサ(東京・中央)の社長が小滝の人や風土を気に入り、コメのブランド化で連携することになった。

そして生まれたのが、ワインボトルに詰められたコメ「コタキホワイト」。ワインボトルは高級感を演出できるほか、保存にも向くため、良質なコメをおいしく食べてもらえる。価格は1本(4合)で約2600円と高価。瓶詰めは地区住民が担い、サエグサがネットなどで販売する。

JAに卸すよりも農家の手取りは2割増えるため、サエグサへの出荷は年々増加。18年は地区で30トン生産するうちの17トンをコタキホワイトとして販売する予定という。

コメのブランド化とあわせて、復興の柱としたのが他地域の人との交流だ。「それまでよその人が来ることがなかった」(樋口氏)という小滝地区に人を呼び込むため、15年に築200年の古民家をゲストハウス「となり」として改装した。「小滝の暮らしを味わってもらう」(同)のが目的で、地区住民が宿泊者と積極的に交流。人口約40人の集落に、これまでに1700人が泊まったという。

こうした取り組みが奏功し、活気を取り戻しつつある。若い夫婦が移住してくるなど人口はわずかに増え、平均年齢も若返った。

最近、住民同士の会話ではたまに「地震のおかげで」という言葉が飛び出るという。樋口氏は「地震がきっかけでいろいろな人に出会えた。地震がなければできなかったこともある」と話す。存続の危機をばねに活気を取り戻した集落は、300年先の未来を見据えている。(北川開)

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