2019年9月18日(水)

日本が欠くローマー氏の視点(大機小機)

2018/10/31 18:20
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2018年のノーベル経済学賞はニューヨーク大学のポール・ローマー教授が受賞する。彼の大きな功績は、技術革新(イノベーション)が持続的な成長を生み出す源泉であると示したことだ。初期時点の条件がほぼ同じでも、技術革新が生み出すほんのわずかな知識やアイデアの違いによって、その後の経済成長が大きく異なる可能性があることを、ローマー氏は明快に描き出した。

技術革新につながる研究開発は、短期的には企業の利益に貢献しない。このため、研究開発費を削減して当面の利益を高めようとする企業も少なくない。しかし、このような近視眼的な行動は多くの場合、持続的な成長を実現するには逆効果で、中長期的な利益を低迷させる原因になる。

ローマー氏の視点は、最近の日本企業の動向を考えるうえで重要な含意を持っているといえるのではないか。確かにここ数年、アベノミクスの下で日本企業の業績は大幅に改善した。最高益を記録した企業も多い。しかし、残念ながら、大きな技術革新の進展が業績拡大を後押しした事例は少数派である。

増加した利益が現預金などの余剰資金として企業の手元に滞留し、先を見据えた研究開発が停滞する傾向は、さまざまな分野で顕著だ。少子高齢化で国内市場の縮小が見込まれることを割り引いても、中長期的な視野に立った成長戦略が実行されている企業が多いとは言い難い。

足元の利益の多さに照らせば、日本企業の株価は割安である。株価を1株当たり利益で割って算出するPER(株価収益率)を国際的に比較した場合、日本株が米国や欧州を下回る水準にとどまることはよく知られている。

しかし、利益が増えているからといって、それだけで日本株が割安であると言い切るのは早計だろう。株価とは目先の利益より、中長期的な成長可能性を色濃く反映するものだからだ。ローマー氏の視点から考えれば、足元の利益は高くても成長戦略が欠けていれば、マーケットがその企業を評価しないのはむしろ自然なのである。

持続的な成長を実現するには技術革新が重要であるという認識を改めて共有することが、日本経済が真に復活するための原動力といえる。(甲虫)

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