2018年12月11日(火)

メキシコ新空港建設中止で経済界に衝撃 株・通貨が下落
次期政権の大衆迎合手法に懸念広がる

中南米
2018/10/31 18:04
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【メキシコシティ=丸山修一】メキシコで12月に就任するロペスオブラドール次期大統領が首都の新空港の建設を中止すると表明し、経済界に懸念が広がっている。簡易な「住民投票」で巨額のインフラ計画を容易に覆す手法が投資環境の悪化を招くとの見方だ。決定を受け株価や通貨相場は下落。ポピュリズム(大衆迎合主義)の色彩が強い同国初の本格的な左派政権のかじ取りに早くも暗雲が垂れこめてきた。

メキシコ新空港の工事は中止に(10月29日、メキシコ州)=ロイター

中止を表明した10月29日の1日だけで、代表的な株価指数のIPCは4%下落。通貨ペソの対ドル相場も3%下がった。地元金融機関バンコメルのエドゥアルド・オスーナ最高経営責任者(CEO)は30日、「中止決定は投資減につながり、経済成長に否定的な影響がでる」と警告した。

「今回の決定は金融市場や投資家だけでなく、すべての国民に動揺を与える」。メキシコ最大の経済団体、企業家調整評議会(CCE)のカスタニョン会長は29日、緊急の記者会見を開いた。「国家としての約束を破るとともに、現在の法的な枠組みさえ壊す」と強い口調で批判した。

首都メキシコシティの玄関口である現行の空港が手狭となり、ペニャニエト現政権は隣接のメキシコ州で新空港を着工。すでに全体の2~3割ができあがった。

これを批判したのが7月の大統領選で当選したロペスオブラドール氏だ。130億ドル(約1兆4700億円)ともいわれる総工費が「高すぎる」と指摘。工事を続けるかどうか国民の意見を聞いて決めるとして10月下旬に住民の意識調査を実施した。結果、7割が計画撤回を支持したという理由で、中止を表明した。

しかし、今回の意識調査である「国民アンケート」は法律に基づく正式な手続きといえない。回答したのは建設反対派が中心の100万人程度で、有権者の1%程度にすぎない。地元メディアは「1人で複数の回答が可能だった」と指摘する。

それでもロペスオブラドール氏は「国民が判断した」と主張する。米金融機関の関係者は「中止決定で次期政権の運営に不透明さが増した。(今回の意識調査のような方法による)中止決定は、他のプロジェクトでも起こり得る」と警告する。

工事中止で建設会社などが受ける直接の経済的な打撃も大きい。カスタニョン氏は「4万5千人の雇用が失われ、(契約への)補償は1000億~1200億ペソ(約5600億~6700億円)に上る」と主張する。

次期政権は現空港を存続させ、比較的近い軍用空港を拡張したうえで併用する方針だ。現政権は任期の11月末まで新空港の工事を続ける考えで、正式な工事中止の手続きは次期政権の発足後になる見通しだ。

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