2018年11月17日(土)

前政権否定、日本に飛び火 徴用工裁判で日本企業敗訴

朝鮮半島
ビジネス
2018/10/30 16:50
保存
共有
印刷
その他

【ソウル=鈴木壮太郎】韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金の敗訴の確定判決を下した底流には、革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権が保守政権下に政府機関や経済、社会に定着した慣行や政策を一掃する「積弊清算」を進めていることがある。司法界でも吹き荒れた前政権否定の流れが日本に飛び火したのは否めない。

5年間、塩漬けになっていた徴用工裁判が動きだした背景には、昨年5月の文政権の発足がある。朴槿恵(パク・クネ)、李明博(イ・ミョンバク)と続いた保守政権を「積弊」とみなす文政権は、政府や公企業などの主要ポストから前政権で任命された人々を外し、信条が近い革新系の人物を起用した。

最高裁長官もその一人だ。文氏は革新系判事が集まる「我が法研究会」会長だった金命洙(キム・ミョンス)前春川地方裁判所長を指名した。金氏は最高裁判事の経験がなく、異例の抜てきだった。

金氏は6月、梁承泰(ヤン・スンテ)前長官時代に裁判所が朴政権の意向をくんだ判決を下してきたとの調査結果をまとめ、検察への捜査に協力すると表明した。そこから検察が動き、朴政権と司法との癒着の疑惑が続々と明らかになった。

その代表例とされたのが徴用工裁判だ。日韓関係の悪化を懸念する朴政権に配慮して最高裁が判決を遅らせる一方、その見返りとして在外公館で勤務する裁判官の枠の拡大を求めたとの疑惑が浮上した。検察は今月27日に林鍾憲(イム・ジョンホン)前法院行政処次長を逮捕しており、梁氏への捜査も進む。

思わぬかたちで徴用工裁判に注目が集まると、最高裁は7月に13人の判事全員が参加する全員合議体での審理入りを発表。30日の判決へと一気に動いた。「憲法の上に『国民情緒法』がある」。韓国ではこんな言葉があるように、行政、司法は世論の動きに流されやすいとされる。「積弊」である朴政権が望んだ日本企業の賠償回避という判決は下しにくく、敗訴は予想された結果だった。

文政権は日本との関係悪化を望んではいない。韓国政府は近く徴用工問題の対策をまとめる。国内問題として解決策を提示することで、日本との関係悪化は食い止めたい考えだ。徴用工被害者への資金支援も視野に入れている。

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報