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大坂なおみが今季手にした最大の収穫とは…

女子テニスの大坂なおみ(21、日清食品)の長くて熱い秋が終わった。9月8月に全米オープン女子シングルスを制してから約2カ月、経験したことのない怒濤(どとう)の日々を過ごし、年間上位8選手によるWTAファイナル(シンガポール)にも初出場してようやく終わった。最後は左太ももの痛みで途中棄権という残念な結果になったが、ゆっくりできることには正直、ホッとしているかもしれない。「家に帰りたい。全米オープン以降帰っていないから。犬に会いたい。私のこと覚えているかなあ」との本音も漏れた。

大坂はWTAファイナルで痛めた左太ももの治療を受け、棄権を余儀なくされた=ロイター

「18年はクレージーだった」

「クレージーだった」。シンガポールで大坂は今季をこう総括した。1月の全豪オープンで四大大会初の4回戦に進出し、その2カ月後には四大大会に次ぐ格付けのBNPパリバ・オープンでツアー初優勝を飾った。「その後は全米オープンまでほぼ何も(結果を残)していなくて……」と自虐的に話したが、全仏オープン、ウィンブルドン選手権で3回戦に進むなど、実際には昨季より内容はいい。四大大会で初優勝した後の大会で初戦で姿を消す選手も多いなか、凱旋試合である東レ・パンパシフィック・オープン(PPO)で準優勝、BNPパリバと同じ格付けの中国オープンで4強入り。WTAファイナルは1次リーグで敗退したものの、十分すぎる成績だ。「アップダウンがあったシーズン。(シンガポールで)またダウンの時期がきたという感じかな」と冷静に受け止める。

ツアー初優勝をビッグタイトルで飾り、ファンやメディアからの注目、プレッシャーとの付き合い方がわかったと語っていたが、四大大会のそれは桁が違う。華やかなWTAファイナルの雰囲気で気持ちは盛り上がっただろうが、大坂の体が追いついていかなかった。

大坂の2018年の出場大会数は20。17年の22大会(ダブルス5大会除く)、16年の22大会(ダブルス2大会除く)より少ないが、今季は優勝を含めて上位まで勝ち進んだ大会が多く試合数は増えた。疲労が重なり、東レPPOの後は中国・武漢の大会は欠場。ずっと背中にテーピングを巻いていた中国オープンの後、香港の大会を欠場した。

大坂だけではない。今季の四大大会覇者4人のうち、世界ランク1位で全仏女王のシモナ・ハレプ(ルーマニア)は背中の故障でWTAファイナルを欠場。全豪女王のキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)、ウィンブルドン女王のアンゲリク・ケルバー(ドイツ)は大坂同様、4強に進めなかった。ファイナルを制したのは四大大会8強が最高のエリナ・スビトリナ(ウクライナ)。上位陣にそれほど大きな実力差がないテニス界で、1人の選手が勝ち続けるのは容易でない。

粘り負けする試合が大幅減

全米以降、大坂の戦い方に大きな変化があった。尊敬するセリーナ・ウィリアムズ(米国)と同様、大坂が負けるときはミスを連発して自滅するパターンが大半だった。大坂を気分よくプレーさせたら、ほとんどの女子選手はまともに打ち合えない。だからこそ、対戦相手は大坂のミスを誘おうと嫌がりそうな場所にボールを運び、ラリーで粘って根負けを狙う。その術中にはまってぷっつり集中力が切れる試合も目立ち、勝っても負けてもストレートで終わる試合が多かった。

ただ、一段と体も絞れた全米以降は粘り負けする試合が格段に減り、戦術的なオプションも増えてきた。WTAファイナルでは2連敗したとはいえ、第1セットを落とした後、第2セットは奪い返して簡単には負けていない。

「自信とはいわないけれど、心の中が落ち着いているというか。1月のころはまだまだ自分がやっていることに確信が持てない部分が多かったから」と話す。以前は自分に実力があることを見せつけたくて仕方なかったものの、そういった意識もなくなってきたという。

そうはいっても、思うようにいかない展開にじだんだを踏み、ラケットを放り投げてしまう場面もある。勝ちたい気持ちが強いあまり、こうした態度が出てしまう。それを「よくない」こととわかっていて、試合後に謝罪しているのがほほ笑ましい。中国オープンでは苦しい展開に泣きながらプレーして、勝った試合もあった。それを未熟という声もあるが、漫画の主人公のような人間臭さが日本以外でも人気を集める要因でもある。

潜在能力を一気に開花させた18年、一番学んだことは何だったのだろうか。「先を見すぎなくなった。まずは目の前の試合に全力を注ぐことに集中する。出場する大会は全部勝ちたいけれど、現実は違う。大会すべてに勝つ選手はいない。まずはいいプレーを心がけないといけない」。小さなミスも許せなかった、自他ともに認める「完璧主義者なおみ」の大きな発見だった。

(原真子)

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