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豊島逸夫の金のつぶやき

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騒乱市場に忍び寄るスタグフレーションの影

2018/10/30 9:27
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異常な値動きと言わざるを得ない。昨晩の米国株相場でダウ工業株30種平均は寄り付き後、前日比350ドルを超して急騰した。アマゾン、アルファベットの「失望決算」を織り込み、回復基調に戻るかと思わせたが、異変は日本時間午前3時頃に起こった。

「トランプ政権はいよいよ中国からの全輸入品に関税引き上げか」との報道が流れて市場心理が一気に悪化。24前後で小康状態にあった米株の変動指数(VIX)は瞬間的に28まで急騰。ダウに下げ圧力が強まり、一時は前日比560ドル超下げまで売り込まれた。日中の値幅は900ドルを超えた。救いは、大引けにかけて下落幅が前日比245ドルまで急速に買い戻されたことか。

人工知能(AI)の売りが売りを誘発する制御不能の展開の中、「対中関税のさらなる引き上げ」というキーワードはアルゴ売買を刺激する。「市場に人影がない」とのトレーダーのつぶやきが印象的だ。ゴーストタウンのごときマーケットでモニター画面の数字だけが刻々激しく動く市場風景が連想される。この流れを止めるには、AI売買のスイッチをオフにするしかないのか。

不気味なのは、株以外の債券、外為、商品の各市場にはさほど大きな動きがみられないことだ。スタグフレーションの影におびえているようにも見える。

物価は上昇が鈍いがじわりと上がってきている。米連邦準備理事会(FRB)が最も注目するインフレ指標である9月の米個人消費支出(PCE)は前年同月比2%を示した。サウジアラビアの異変が原油価格の急騰を招くリスクも無視できない。関税の引き上げが国内物価を引き上げる影響も効き始めている。

一方、米債券市場では、イールドカーブのフラット化が解消されない。長短金利差を表す10年債と2年債の利回り格差は僅か20~30ベーシスポイント(0.2~0.3%)程度まで縮小したままだ。12月に利上げが実行されると、相関の強い2年債の利回りが10年債の利回りを追い越して逆転する「逆イールド現象」が起こりかねない。過去の事例では、逆イールドの後はほとんど景気が後退しているので、市場は不気味な兆しと危惧する。

その結果、インフレと不況が同時進行するスタグフレーションが絵空事とも言えないのだ。スタグフレーションは究極のリスクオフ。全員負けのシナリオだ。リスクオフ株安で買われるはずの金ですら昨晩は価格を下げた。

多くのファンドマネジャーが当面のリスクを減らす「ディリスク」に走るとき、セリング・クライマックス(売りのピーク)が起きるかもしれない。

米中間選挙がいよいよ近づき、トランプ嫌いが多いウォール街も、本音は共和党勝利でトランプ相場のモメンタム(勢い)が継続されるシナリオをひそかに願っているとさえ語られる。

世界情勢は歴史的転換点にある。メルケル首相が与党党首を辞任することでドイツが内傾化し、欧州連合(EU)はイタリアのポピュリスト政権に対して、放漫財政に対する制裁金も含め「見せしめ」的に態度を硬化せざるを得ない。英国のEU離脱が悪しき前例とならぬように、ブレグジット交渉にも妥協を許さぬ、より強い姿勢でのぞむだろう。

市場はユーロという地域共通通貨の求心力低下を危惧する。ギリシャ危機より悪性の経済不安ともいえる。ギリシャショックの時には、ドイツは元気だった。欧州中央銀行(ECB)はイタリア国債を含め欧州国債の購入を年内で打ち切る方針だ。

量的緩和マネーで潤ってきた新興国を含む世界の株式市場から流動性が引き潮のごとく引いてゆく。量的質的緩和を継続する日銀が「最後の流動性の出し手」として意識されている。本日の日銀金融政策決定会合は無風とみられるが、世界の市場の注目度は高い。「何か発表あれば(米国が)深夜でも電話でたたき起こしてくれ」。切迫感に満ちたヘッジファンド関係者の一言が印象的だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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