LNGスポット 米中摩擦で厚み 直接取引細り仲介に商機

2018/10/30 6:00
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液化天然ガス(LNG)市場で、スポット(随時契約)取引が拡大する流れを米中貿易摩擦が後押しするとの見方が出ている。中国が米国のLNGに報復関税をかけたことで両国の直接取引が減れば、第三者を介した売買の機会が増す。LNG取引は世界的に長期契約が主流だが、スポット取引が厚みを増しそうだ。

「貿易戦争はトレーダーや中国の近隣国に短期取引の大きな機会をもたらすだろう」。中国のSIAエナジーのヤオ・リー最高経営責任者(CEO)は22日、日本政府などが名古屋市で開いたLNG生産国と消費国の国際会議でこう指摘した。

中国のLNG輸入量は2017年に前年比5割増え、日本に次ぐ第2の買い手に急浮上した。大気汚染対策のため燃料を石炭から天然ガスに切り替える政策を進めており、18年も伸びは続く。

供給側では米国がシェール革命を追い風にLNG輸出を加速する。17年の対中輸出量は前年の6倍に膨らんだが「主役の2カ国が直接取引できない」(リー氏)事態を招きかねないのが貿易戦争だ。中国は9月、トランプ米政権による制裁関税に対抗し、LNGに10%の報復関税をかけた。

現時点でアジアのスポット価格への影響は限定的だ。100万BTU(英国熱量単位)あたり10ドル台後半と高値圏だが急騰はしていない。高騰リスクについては「LNG契約の柔軟性が吸収する要因になる」と国際エネルギー機関(IEA)の貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長はみる。

LNG取引は長期契約が主流で、中東など従来の輸出国は買い手が第三国に再販売するのを制限してきた。だが契約期間が短く、仕向け地が自由なほど柔軟性は高まる。その売買の舞台となるのがスポット市場だ。

今後のカギを握るのが米国産だ。第三国への再販売に関する縛りがなく、日本企業が買い、中国や欧州に転売できる。仲介者の商機は広がる。IEAによると中国が輸入するLNGのうち、17年に18%だったスポット調達の比率は18年上半期に21%まで高まった。

既に国際石油資本や資源商社大手はスポット取引の事業を拡大。長期契約で買う側だった日本勢も売り手として存在感を高めようとしている。

東京電力ホールディングス中部電力の共同出資会社で、世界最大のLNGの買い手であるJERA(東京・中央)は19年、仏電力大手EDFとLNG取引事業を統合する。垣見祐二社長は「世界規模で(需給を)最適化する事業を本格的に進める」と強調した。

日本企業が米国産LNGをアジアに輸出する事業を政府が支援するのもこうした変化を映した流れ。日本を経由せず第三国に直接届ける場合も政策金融の対象にする。

原油と同様に、LNGでも日本は買い手としての地位が後退する可能性が高い。だが市場構造の変化は取引の力をつける好機。奏功すれば、原子力発電所の再稼働などで見通しづらい日本のLNG需要の変化に機敏に対応する余地も広がる。

(久門武史)

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