/

ポイント還元制の問題点(大機小機)

政府は来年の消費増税対策として、中小店舗でのクレジットカード払いなどを対象に増税分をポイントで還元する方策を検討している。消費の落ち込みの緩和とキャッシュレス化の促進が狙いなのだという。この政策目的は妥当なのか。筆者は、とりわけクレジットカードやスマートフォン(スマホ)での決済を政府主導で普及させようという考え方に疑問がある。

カード社会の問題点はこれまでも指摘されてきた。カード払いでは現金で支払う場合のような心理的縛りがなくなり、使い過ぎてしまうのだ。

米国のある研究者の実験では、1台のトースターに対して、カードが利用できる環境の被験者は現金のみの被験者に比べ、3倍の金額を支払う意思をみせたという(ジョージ・アカロフ、ロバート・シラー著、山形浩生訳「不道徳な見えざる手」)。

同じく米国の行動経済学者、ダン・アリエリー氏は、自身の多数の実験を踏まえて「社会のキャッシュレス化が進むにつれ、わたしたちの道徳的指針がますます損なわれるのではないか」と警告している(ダン・アリエリー著、桜井祐子訳「ずる―嘘とごまかしの行動経済学」)。

2008年のリーマン・ショック以降の金融緩和政策のもとで世界全体の負債額は膨張しており、世界経済の重大なリスク要因となってきている。家計の負債金額の対国内総生産(GDP)比(16年)を計算すると、日本は約70%。主要国ではドイツと並んで低い。一方、韓国やオランダは120%を超えている。デンマークやオーストラリア、カナダも100%を上回っている。米国は80%だ。

この数値が高い国はおおむね、キャッシュレス化が進んでいる国である。韓国はキャッシュレス化比率が90%といわれている。現金指向の強い日本は20%にすぎない。ちなみに韓国政府は今年、一部の債務返済困難者に借金を棒引きする徳政令を発した。

IT(情報技術)の進展や金融機関が生産性向上を迫られている事情を考えれば、キャッシュレス化は時代の趨勢であろう。しかし、あくまで人々の選択に委ねられるべき問題である。政府の役割はゴリ押しすることではなく、その負の側面に注意を払うことではないだろうか。(一直)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン