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男子ゴルフ世界1位 ケプカを育んだ異色の経歴

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

先日、米男子ゴルフのブルックス・ケプカ(米国)が韓国・済州島のナインブリッジズで行われたCJカップを制し、10月22日付の世界ランキングでトップに躍り出た。これで、この1年でランキング1位となったのはダスティン・ジョンソン、ジャスティン・トーマス(ともに米国)、ジャスティン・ローズ(英国)に次いで4人目となっている。その年の頂点に4人が立ったのは1997年以来だ。

ケプカはCJカップを制し、10月22日付の世界ランキングトップに躍り出た=AP

その21年前を少し振り返ると、あの年はアーニー・エルス(南アフリカ)とトム・リーマン(米国)が1週ずつ1位となり、あとはグレグ・ノーマン(オーストラリア)とタイガー・ウッズ(米国)が分け合った。ケプカは86年に世界ランキングが導入され、最初に1位となったベルンハルト・ランガー(ドイツ)から数えて23人目の選手ということになる。

あえて「回り道」を選択

さて、そのリストにはニック・ファルド(英国)、フレッド・カプルス(米国)、ニック・プライス(南アフリカ)、ビジェイ・シン(フィジー)、ロリー・マキロイ(英国)、ジョーダン・スピース(米国)らそうそうたるメンバーが名を連ねているが、そんな彼らと比べると、ケプカは異なる道を通ってここへたどり着いた。

特に米国人選手の中では、異色の経歴である。

通常、米国出身のトッププロの多くは高校時代に頭角を現し、奨学金をもらって大学へ進学する。そこでアマチュアのタイトルなどを獲得して有名になると、スポンサー推薦などで米PGAの大会に出場する権利を得る。そして、結果を残すとさらに違う大会に推薦され、そうしたことを重ねるうちに勝利を挙げ、そのままPGAツアーのメンバーになるといったエリートコースをたどる。ウッズやスピースが通ったのがまさにこのルートだ。

一方でケプカはスピースと同じ2012年にプロに転向すると、下部ツアーの下部ともいえる欧州のチャレンジツアーに挑んだ。どこで試合が行われるのか聞いたこともないようなコースを転々とし、そこで実績を重ね欧州PGAツアーの出場資格を得たのである。

その後、スピースが2位タイに入って注目された14年の全米オープン選手権で4位タイに食い込み、14~15年シーズンの米PGAツアー出場資格を獲得。それを足がかりに同ツアーに本格参戦すると、15年2月、ウエストマネジメント・フェニックス・オープンで優勝し、米国での足場を確かなものとした。

それからの活躍はもう知られるところ。17年には全米オープン選手権を制し、今年も同大会に勝って史上7人目の連覇を果たすと、全米プロ選手権では最後、ウッズを振り切って今季メジャー2勝目をマークしている。

実のところ韓国で勝つまで、日本での2勝を除けば16~17年、17~18年の過去2シーズンは3勝しか挙げていない。それがすべてメジャー大会というのはケプカの大舞台での勝負強さを象徴するのだが、それではいったい、そんなケプカの強みはとは何か。

ケプカはエリートコースを選ばず、あえて未知の世界に挑んだ=ロイター

突き詰めれば、大学でそこそこの実績を残しながら、卒業後に欧州へ渡ったことが何をもたらしたかだが、やはりその回り道こそが彼を支えているものであるようだ。

厳しい環境で自分自身も磨く

ケプカはこれまでスペイン、イタリア、スコットランド、トルコ、日本、韓国、そして米国という7カ国で勝利を挙げているが、コースセッティングや環境が異なる状況で結果を残してきた。そこで養われた精神的な強さがプレーにもにじみ出ている。そのことを彼のマネジャーでもあるブレイク・スミス氏がこう証言した。

「それがブルックスの求めたものなんだ」

ケプカはあえて未知の世界に挑んだ。スピースらのように他の選手を上回る才能に恵まれていたわけではない。ならば、自らを厳しい環境に置き、ゴルフだけでなく自分自身も磨こう――。こうした決断の裏にはそんな意図があったという。

スミス氏が続ける。

「どの選手にもこの道は開けている。でも、ほとんどが断っている」

その道というのは、米下部ツアーでプレーする選手らの方がまだ恵まれているとさえ映るそうだが、ケプカはそこでこそ、他の選手が持っていないものを得られると考えた。プロの世界ともなれば、誰もが高い技術を持っている。キャリアを分けるのは、わずかな差である。それをケプカはリスクを承知で道標のない道の先に求めた。

このところ、冒険を嫌う選手が多い中、ケプカにはそこへ踏み出す勇気を持っていたともいえよう。

近いうちに、彼の選択が見直されるときがくるのかもしれない。

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