2019年8月23日(金)

タイ総選挙、3勢力争う 軍政との距離焦点
「反軍」タクシン派、新党首にウィロート党首代行選出

2018/10/28 19:00
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【バンコク=湯田昌之】軍事政権下のタイで、2019年に実施される総選挙に向けて政党が動き出した。軍政が政治活動を一部解禁したためで、反軍政のタクシン元首相派で前与党のタイ貢献党は28日、党大会を開きウィロート党首代行を新党首に選んだ。総選挙の焦点は軍政の事実上の延命を許すか否か。主要政党は大きく3つの立場に分かれ、三つどもえの選挙戦になりそうな情勢だ。

タイ貢献党は、軍政による政治活動禁止のため党首は長らく空席だった。ウィロート氏は選出後に「総選挙への準備が重要な課題だ」と発言。「選挙に向けて強く活動していく」とも述べた。一方で軍政に対する強い批判は避けた。

ウィロート氏はタイ中部アントン県出身の84歳。元警察中将で、タイ貢献党のライバル、民主党が政権を握っていた2000年に副首相を務め、その後タクシン派に転じた。

タクシン派は選挙に強く、01年以降の総選挙で連勝。軍政のプラユット暫定首相が率いた14年5月のクーデターで政権の座を追われた。貧しい東北部の農民らを中核とする支持基盤は強固で、総選挙では貢献党が再び第1党になることが有力視されている。

反軍政の新党も産声を上げた。民主派の若手活動家らが創設したのは新未来党だ。地場自動車部品大手の創業家出身のタナトーン党首を中心に、地方組織づくりや党員集めに乗り出した。

タイ憲法は、今年12月10日前後になる下院議員選挙法の施行後、150日以内に総選挙を実施すると定める。現時点では19年2月24日説が有力だ。発足から4年を超えた軍政に有権者の審判が下る。

タイは日本企業にとって東南アジア最大のものづくり拠点だ。製造業の17年末の直接投資残高は4兆5千億円と対アジア投資の2割近くを占める。混迷するタイ政治の行方は日本企業の大きな関心事となっている。

政党活動が活発になる契機となったのは、軍政支持派の本命と目される国民国家の力党(パランプラチャーラット党)が今年9月末に開いた結党集会だった。ウッタマ工業相を党首に選出。副党首や幹事長も加えた党の重要4ポストを現役閣僚が占め、軍政との親密な関係を浮き彫りにした。

同党は総選挙後、次期首相にプラユット氏を推し、親軍政権の樹立をめざす見通し。バンコクの南東3県に高度産業を集積させる「東部経済回廊(EEC)」など軍政の経済政策を継承するのは確実で、民主化の前進よりも政策の継続性などを重視する産業界に支持が広がる可能性がある。

総選挙の焦点は、こうした軍政の事実上の延長を有権者が受け入れるかどうかだ。貢献党と新未来党は反軍政の急先鋒(せんぽう)。タクシン派を拒絶し、エリート政治を望む軍人、官僚、財閥ら伝統的支配層が支持する国民国家の力党が対極に位置する構図だ。

第3の勢力は軍政、貢献党の双方と距離を置くことで存在感を示そうとしている。代表格が古豪・民主党だ。11月初めに党首を選び、選挙戦略を固める。過去の選挙では反タクシン派票の受け皿となってきたが、国民国家の力党の登場などを受けて独自色を打ち出す必要に迫られている。

この総選挙から導入されるタイの新選挙制度の下では、どの政党も単独での過半数獲得は難しいもよう。第3勢力が最終的に親軍政、反軍政のいずれに付くかで政権の行方が決まる可能性もあり、彼らにとっては選挙後の連立交渉まで視野に入れた選挙戦となる。

ただ総選挙の日程を巡っては不透明感が残る。軍政は延期を繰り返しており、強権を発動すれば憲法上の150日ルールも止められるとの見方もある。プラユット氏が総選挙より先に実施すると6月に表明した、国王の戴冠式の日程が未定であることも不安材料だ。

タイ貢献党には解党リスクもある。同国の政党法は国外居住者による政党への指示を禁じる。海外にいるタクシン氏との関係を軍政は問題視。選挙管理委員会に調査を求め、選管も動き始めた。解党命令が下れば、民政復帰への道筋に曇りが生じる可能性がある。

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