新日鉄住金とミタル、近づいたインドの「大鉱脈」

2018/10/26 16:06
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新日鉄住金が欧州アルセロール・ミタルと進めているインド鉄鋼大手エッサール・スチールの共同買収が前進した。26日までにエッサールの債権者委員会がミタル連合を落札者に認定。今後、インド会社法裁判所の審査を経て正式に買収する。インドは世界の鉄鋼業界でも成長を見込める「大鉱脈」だ。保護貿易の台頭で世界経済の不透明感が増すなか、市場攻略の足がかりを得る。

ミタルが提示した買収額はエッサールが抱える債務を含めて4200億ルピー(約6400億円)。さらに買収後の運転資金を含めると総投資は5000億ルピー(約7600億円)を見込む。買収額を含めた新日鉄の投資額は3000億円を超えるとみられ、新日鉄が海外で手掛ける買収案件としては過去最大の投資だ。

インドの粗鋼生産量は2017年で約1億トン。18年中にも日本を上回り、中国に次ぐ世界2位の粗鋼生産国となる見通しだ。建築用や自動車向けに鉄鋼需要は伸び続けている。成長市場の取り込みは外資を巻き込み厳しさを増す。国内市場が縮小するなか、新日鉄にとって成長市場を取り込めるかが課題だった。

エッサール・スチールの買収に向けて前進(インド西部グジャラート州の同社製鉄所)

エッサール・スチールの買収に向けて前進(インド西部グジャラート州の同社製鉄所)

新興国を狙う海外メーカーに求められるのが、現地の製鉄所や鉄鋼会社に事業資金を投入し、上流から下流まで一貫して手掛ける「自国生産化」への協力だ。日本の製鉄所から「母材」となる原板を輸送し、加工工場で鋼材加工する方式では新興国は産業が育たず、敬遠される。新日鉄がインドで直接投資にこだわってきたのはこのためだ。

ミタルにとっても最初の提携から約30年の長年のパートナーである新日鉄の技術力を活用できるメリットは大きい。

米中の貿易戦争の長期化も背景に今後、各国が対抗措置を発動すれば、貿易の停滞への懸念が増す。新日鉄にとっては、国内の製鉄所と海外加工拠点をつなげる「分業輸出」型では限界がでてくる。まずインドで一貫生産拠点を構えることで貿易摩擦のリスクに備える狙いもある。

両社は今年3月に共同買収で合意していたが、その後、入札資格をめぐる訴訟や上告が繰り返され、交渉は混乱した。交渉の長期化も背景に最終的な入札価格は当初より高値で決着。今後、生産設備に対する追加投資が膨らむ可能性もある。

新日鉄住金は今年発表した中期経営計画で、今後3年間のM&A(合併・買収)などの事業投資に約6000億円を投じるとした。「成長市場を獲得できる千載一遇のチャンスで、リスクを取っても買うべき案件ではある」(SMBC日興證券の山口敦氏)。ただ、今後の追加投資を念頭に置けば3000億円を超える投資は決して安い買い物ではない。かつてブラジルの製鉄所経営を巡る混乱なども経験した教訓を生かせるのか。同社幹部は「十分に採算が取れる水準で決着した」と振り返るが、投資回収に向けた明確な道筋を投資家に示すことも求められる。(川上梓)

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