2019年6月19日(水)

世界株安、マネー流出と戦うアジア
アジア総局編集委員 小平龍四郎

2018/10/26 5:00
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世界的な株価の乱高下に東南アジア諸国連合(ASEAN)が揺れている。世界の他の新興国よりも相対的に経済や市場が安定していると考えられてきたが、一部で深刻な資金流出のリスクがくすぶり続ける。20年あまり前に通貨危機を経験した国々は、市場動乱の中で経済の地力が試されている。

ASEAN経済に向けられる視線には期待と不安が交錯する。(インドネシア・バリ島でのIMF・世銀総会会見/撮影 小平龍四郎)

ASEAN経済に向けられる視線には期待と不安が交錯する。(インドネシア・バリ島でのIMF・世銀総会会見/撮影 小平龍四郎)

「最も魅力的だ」。10月半ば、インドネシア・バリ島の国際通貨基金(IMF)・世銀総会に出席したユーラシア・グループ社長のイアン・ブレマー氏は顧客向けリポートに、東南アジアの経済や市場の先行きに強気の見方を示した。米中貿易摩擦が暗い影を落としたIMF総会。「私がこれまで出席した中でも決して明るいものではありませんでした」と総括されたリポートの中で、東南アジアへの高評価はとりわけ目立った。

加盟10カ国の総人口が日本の5倍の6億4000万人に達する、世界でも屈指の高成長地域。ASEANはこんな良いイメージをまとってきた。最近は米中貿易摩擦の激化を受け、生産拠点や部材調達を中国からASEAN諸国へ移す企業が相次ぐなど、漁夫の利を思わせる例も増えた。

IMFの最新予測は、2019年の全世界の新興・発展途上国の成長率の下方修正が0.4ポイントと大幅だったのに対して、ASEAN主要5カ国は0.1ポイントにとどまった。政治に目を転じても「それぞれ国内での緊張はあっても地域全体としては安定している」(ブレマー氏)。政経両面で世界の激震と一線を画す底堅さが、ASEANの売り物だった。

しかし、市場の評価は手厳しい。フィリピンやシンガポールは年初来の株価指数の下落率が2桁に達している。さらに深刻なのは通貨ルピアがアジア通貨危機以来、20年ぶりの安値圏を推移しているインドネシアだ。米国の利上げに伴う新興国からのマネー流出懸念が強まっている。

かつて通貨が売られやすい新興国の総称「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」の1つにも数えられたインドネシア。同国の中央銀行は23日の金融政策決定会合で3会合ぶりに金融政策を据え置いたが、「引き続き経済や為替動向を注視する」との声明を発表。5.75%の政策金利はルピア防衛のために早晩、6%に引き上げられるとの観測が根強い。

インドネシア経済のアキレスけんでもある経常赤字は名目国内総生産(GDP)比2.3%程度で、4.9%のアルゼンチンや5.5%のトルコほど悪くない。対外債務の負担も他国に比べ際立って高いわけではない。通貨危機の際に問題視された、債務の通貨や期間のミスマッチ問題も対応が進む。

それでもグローバルな市場動乱の影響を受けやすいのは、同国の国債の外国人保有率が40%とASEANの中で高く、利上げに伴うマネー流出の連想が働きやすいからだ。この点に注目し、みずほ総合研究所アジア調査部主任研究員の菊池しのぶ氏は「グローバルな投資家の監視の目を意識した政策対応が求められる」と述べている。

国営企業の民営化で外資系投資ファンドの資金を引きつけているベトナムや、古くから日本企業の投資が多いことで知られるタイのような国々にも当てはまる指摘だ。

日本もまた外国人の株式保有比率が約3割を占める。安倍政権の経済政策の成果が市場から厳しく問われるという意味では、ASEAN諸国と同じ課題を抱えていることは言うまでもない。

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