米FASB、のれん償却の是非議論へ 投資家・企業から意見募集

2018/10/25 20:30
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米国会計基準をつくる米財務会計基準審議会(FASB)は24日に評議会を開き、企業のM&A(合併・買収)で発生する「のれん」の会計処理について協議した。上場企業にのれんの定額償却を導入する是非について議論を開始し、企業や投資家から意見を募ることを決めた。償却が導入されれば多額ののれんを抱える企業への影響は大きく、反発も出そうだ。

「償却はコスト面で企業の大きな負担になる」「投資家視点で考えると減損は機能しておらず失敗。特に現行制度では情報開示が不十分だ」――。24日のFASBの評議会ではのれんの会計処理を巡って委員から様々な意見が飛び交った。

現在、米国会計基準では決算期末などに買収先企業の収益力を計算する「減損テスト」を実施。買収先の収益力が大きく下がった時にのみ一括でのれんを減損処理する。

米国でも非上場企業がのれんを10年で定額償却する処理を任意で選択できるが、上場企業には認めていない。今後、FASBは現行の非上場企業にのみ適用する定額償却ルールを上場企業に広げるかどうかを検討する。

今回、FASBののれんの償却を巡る議論が前進したのは、世界的にのれんの会計処理が減損だけでは不十分との見方が強まってきたためだ。

欧州などで広く使われている国際会計基準(IFRS)は現行では米国基準と同様に減損処理だけ。だが、IFRSをつくる国際会計基準審議会(IASB)がこのほど定額償却の検討で議論に着手する方針を固めた。日本は減損に加えて最長20年の定額償却を採用しており、IFRSの方針を受けて米国の動向が注目されていた。

もっともFASBの議論は曲折がありそうだ。

米国企業が抱えるのれんは右肩上がりで増加している。個別では、AT&Tが1054億ドル(約11兆8000億円)、ゼネラル・エレクトリック(GE)が839億ドル(約9兆4000億円)、バークシャー・ハザウェイが812億ドル(約9兆1000億円)ののれんを2017年度末に計上(QUICK・ファクトセット調べ)する。

米主要500社では341兆円に達する。非上場企業と同じ10年で償却することになれば、年30兆円超の費用負担が新たに発生するため、業績へのインパクトは大きい。

仮にFASBが償却導入に傾けば、好調な企業業績や株高を経済政策のよりどころにしてきたトランプ米大統領やM&Aをテコに成長を加速してきた米産業界からの反発が強まるのは必至だ。IASBが「火付け役」となってのれんの償却を巡る議論が世界で盛り上がってきたが、米国の動向次第では議論が膠着してしまう可能性がある。(浜岳彦、ニューヨーク=宮本岳則)

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