ぷりぷりで熱々、あふれる肉汁 ご当地餃子10選
地元の味を包み込んだ、お取り寄せのご当地餃子も増えている。
こんがり焼いたアツアツを、11人の食通が食べつくした。
揺すらず、じっと待つ
家族だんらんや友達との食事に花を添える餃子。中国生まれで、日本でも戦後広く食べられるようになった。中国では厚めの皮に包んでゆでる水餃子が一般的だが、日本では焼き餃子が主流。中国残留孤児が開いた你好(1位)では水餃子も人気がある。
今回取り上げた「ご当地餃子」は素材が楽しい。仙台あおば餃子(10位)に使う雪菜は、雪の中で育つ珍しい北国野菜。6位の「桜えび餃子」は薄いピンクの色合いと、ぷりぷりの食感が味わえる。地元で飼育するブランド豚や鶏肉を使う餃子も健闘した。
ランキング入りした餃子はいずれも冷凍で取り寄せられるが、うまく焼くにはコツがある。1つはフライパンに加えるお湯の量。レシピに1人前120ミリリットルとあれば半人分なら60ミリリットルと思いがちだが、小野寺力さんによると「お湯の量はフライパンの大きさで決まる」。このため、個数が減ってもお湯は同量が基本という。
焼いている途中は揺すったり、裏返したりしたくなるが、「皮が破れる原因になるので、じっと待った方がうまく焼き上がる」(島本美由紀さん)。タレも酢やしょうゆにこだわる必要はない。かんきつ果汁やオリーブオイルを付けたり、こだわりの塩をぱらりとかけたり、自由な発想で味わえるのも餃子の楽しさだ。
「焼餃子」 羽根つき大ぶり 本場の味

東京・蒲田は餃子の街。中でも、羽根つき餃子は蒲田ならではだ。元祖と言われるのが中国家庭料理店の你好(ニーハオ)。中国残留孤児として1979年に帰国した店主の八木功さんが、本場中国の味を伝えようと1983年に開店した。手作りの餃子には日中の思い出が詰まっている。
小麦粉を溶き羽根をつける焼き方は、大連の焼きまんじゅうをヒントに工夫したという。ぱりぱりに焼いた羽根は「見た目もおいしそうで、場も盛り上がる」(都築春美さん)と、一目で食欲をかき立てる。
大きめの餃子を口に入れると、「もちもちしたぶ厚い皮をかむと肉汁があふれ、ボリューム感がある」(玉城ちはるさん)。「味がしっかりしているので、たれ無しでも食べられる」(寺本りえ子さん)と、女性にも好評だった。
素材は豚ばら肉と白菜、長ねぎだけを使用。「ニンニクが入っていないので翌日も気にせず食べられる」(島本美由紀さん)。水餃子も取り寄せ可能で、焼き餃子とは練り方を変えて皮を仕上げている。
(1)20個864円(2)http://www.nihao.co.jp/(3)あり
「チーズ餃子」 とろり流れ出る濃厚な味

北海道を地盤とする持ち帰り餃子店の人気商品。味のバランスを取るためニラを抜き、厳選した2種類のチーズを加えた。酪農が盛んな北海道の味だ。
「厚みがあり、見た目はインパクト抜群。ボリューム感もある」(糸田麻里子さん)。一口食べると、餃子の真ん中からチーズがとろりと流れ出る。「餃子にチーズの組み合わせが斬新でおもしろい」(ユウ・シャーミンさん)、「チーズ入りは子供も大人も喜ぶ。一気に会話が盛り上がりそうだ」(都築さん)と、意外感のある楽しさを評価する声が相次いだ。
味の方も「餃子のベースとなるあんも強くてチーズとのバランスが良い。パンチ力があり酒が進みそう」と小野寺力さん。「味は濃いめだが、チーズがワインに合いそう」(寺本さん)という指摘も。「ボリュームもあり、おもてなしで食べたい1品。トマトソースを掛けても良い」(島本さん)など、さまざまな楽しみ方がありそうだ。
(1)15個880円(2)https://www.gyouza-houei.jp/(3)なし
「餃子」 懐かしい味 変わらぬスタイル

京都を代表する餃子専門店は、創業からもうすぐ50年になる。甘みを重視し、季節ごとに産地を変えて仕入れるキャベツをたっぷり刻み、赤身の多い豚のミンチ肉、ニンニク、ショウガと合わせる。それを弾力のある皮で包み、かりっと焼き上げる。変わらないスタイルが今も人気だ。
「味のバランスがよく、一口目からうまさを感じる」(福野憲司さん)。「肉の味がよくでているジューシーなあん。甘みのある皮が調和していて、毎日でも食べられる」(小野寺さん)、「なつかしい餃子の味。ほどよく大ぶりで、皿に盛っても映える」(藤原奈津子さん)など、シンプルながら、安定感ある味に評価が集まった。
「ショウガが効いている分、保温効果も良さそう」(尾崎彰信さん)、「ママや女性が喜びそう。体ぽかぽかで寒い季節によい」(都築さん)という声も。店舗で出している味噌タレ、ラー油タレは通販でも取り寄せられる。仕込み数が限られるため、到着に時間がかかることもある。
(1)36個1660円(2)http://www.mr-gyo-za.com/(3)あり
「黒豚生餃子」 こだわり九州食材のうまみ

業務用餃子の双和食品工業が2000年に始めた通販が「餃子の王国」。九州の食材へのこだわりが特徴で、肉はほのかな甘みのある黒豚を使い、玉ねぎ、キャベツ、ニラなども九州の契約農家から調達する。「もっちりボディーで、歯触りを残した肉の切り方のあんがよい」(玉城さん)、「たっぷり肉汁でびっくりする。オイル入りのたれをつければワンランクアップ。女性でも一口で食べられる絶妙な大きさ」(藤原さん)と、女性の評価も高かった。「味のバランスが良い。皮のもちもち感とぱりぱりがおいしい」(福野さん)。
(1)15個626円(2)http://www.oukoku-f.com/(3)なし
「もっちり餃子」 きれいな三角形 お土産に

畜産農家が多くキャベツ生産も盛んな宮崎県高鍋町は餃子の街。親戚の集まりには手土産に餃子を持って行く風習があるという。その高鍋町を代表するのがこの餃子だ。皮の焼き目がきれいな三角形は、「お皿に並べるとSNS(交流サイト)映えする」(藤原さん)と見た目も楽しい。2種類の小麦粉を混ぜる皮にもこだわりがある。「皮の厚みがあるので、家庭でも上手に焼き上げられる。冷めても味は落ちにくく、弁当によい」と尾崎さん。「ラードの香ばしさを感じる。ニンニクが効いてビールや中国茶に合う」(糸田さん)といった指摘もあった。
(1)40個2000円(2)https://mawatari.net/(3)あり
「浜松餃子 桜えび餃子」 ぷりぷりで甘く、シソ香る

1人当たりの餃子消費量で1、2位を争う浜松市の餃子。駿河湾に面した由比漁港で水揚げしたプリプリの桜えびを具に練り込み、シソの葉と皮で包んだ。「エビの味が甘く、シソの香りが鼻を刺激する。エビの食感もあって食べて楽しい」(小野寺さん)。「シソの色がよく、エビもぷりぷりしておししい」(寺本さん)、「海鮮系のスープがたまらない。シソの風味も良い。サクラエビの粗い切り方も歯触りが良い」(玉城さん)と、食感の良さを指摘する声が多かった。
(1)20個1490円(2)http://www.hamatarou.jp/(3)あり
「黒兵衛餃子プレーン」 バランス絶妙 酢じょうゆで

皮は自家製の鶏ガラスープで練り上げ、具には鹿児島県産の黒豚と8種類の野菜を混ぜ込んだ。「皮とあんのバランスが良く、味付けもうまい」(山下栄紀さん)。「もちもち感と焼き目のかりっと感がとても良い」(尾崎さん)、「皮がもっちりおいしい」(糸田さん)など、皮のおいしさを指摘する声があった。「小さめで、子供も食べやすい」(都築さん)、「酢じょうゆがちょうど合う。ネギがたっぷりで、ペースト状のあんも食べやすい」(玉城さん)。
(1)30個1150円(注文は2パックから)(2)http://kurobee.com/(3)あり
「ゴーヤー餃子」 ほろ苦く、豚の甘み引き立つ

具だけでなく、皮にもゴーヤーの搾り汁を練り込んだ。「ほんのりグリーンがきれい。ゴーヤーのほろ苦さがビールにあう」(糸田さん)、「ゴーヤーの苦みが好きな人にはたまらない」(福野さん)。具に使う豚肉は100%沖縄県産。「苦みはあまりなく、むしろ豚肉の甘さが際立つ。何個でも食べたい。飛び出るジューシーさもばっちり」(玉城さん)。「ゴーヤーは体の余熱を取り、目に良い」(ユウさん)という。「ほどよい苦み。野菜嫌いの子供にチャレンジさせたい」(島本さん)。
(1)96個4980円(2)http://www.ryu-minmin.com/(3)あり
「冷凍ひとくち餃子」 ピリ辛おつまみ いくつでも

大阪の歓楽街・北新地で創業し、60年以上。小ぶりな一口サイズは大阪餃子を代表する味になり、ミシュランガイドにも掲載された。「両面をかりかりに焼くとおいしい。ピリ辛風がくせになり、ビールのつまみに」(山下さん)、「ぱりぱり、一口サイズでいくつでも食べられる。少し辛みのアクセントがあるのでおつまみに」(藤原さん)とお酒との相性のよさを指摘する声が目立った。「小ぶりで食べやすく、ほどよい辛さが後をひく。友達や夫婦で食べたい」(島本さん)。
(1)70個4410円(35個入りが2箱)(2)http://www.tenpei.jp/(3)あり
「仙台あおば餃子」 さっぱり雪菜しゃきしゃき

あおば餃子は、仙台特産の「雪菜」PRのための統一ブランド。雪菜をたっぷり練り込んだ分厚く丸い形は、おまんじゅうのように見える。「目でも楽しめる1品。野菜たっぷりでヘルシー」(島本さん)、「形と色がかわいい。皮はもちもち」(ユウさん)と見た目の楽しさも評価された。肉は宮城県のブランド鶏「森林どり」を使用。「雪菜が大きめに切ってあり、しゃきしゃきの歯触り。鶏肉とオリーブオイルでさっぱり」(玉城さん)。ニンニクは不使用
(1)8個880円(2)http://www.hachiya-foods.co.jp/(3)なし
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ランキングの見方 数字は選者の評価を集計し、点数化した。ブランド名、所在地、商品名。(1)一包みの個数、税込み価格(送料別)(2)情報サイト(3)イートインできる実店舗の有無。写真は尾城徹雄。
調査の方法 焼き餃子協会(東京・港)などの推薦を基に、取り寄せが可能なご当地餃子21種類をリストアップ。商品同封のレシピに従って料理研究家の島本美由紀さんの指導で焼いてもらい、専門家11人が試食した。皮の食感やあんの味など餃子としての完成度、家庭で食べる場合の楽しさ、見た目のインパクトなどの観点で1~10位を選んでもらい、編集部で集計した。
今週の専門家 糸田麻里子(フードライター)▽尾崎彰信(料理人)▽小野寺力(焼き餃子協会代表理事)▽島本美由紀(料理研究家)▽玉城ちはる(歌手、「餃子女子」筆者)▽都築春美(ココロ食育スクール主宰)▽寺本りえ子(料理研究家)▽福野憲司(崎陽軒点心師)▽藤原奈津子(キッチンツールマイスター)▽山下栄紀(食品流通プランナー)▽ユウ・シャーミン(薬膳料理研究家)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2018年10月27日付]
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