2019年6月19日(水)

勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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成功は小さな成長の積み重ねの先にある

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2018/10/26 6:30
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強いメンタリティーや社会性はどうか。こちらは強化合宿や実戦を通じて推し量っていくことになる。本当に苦しい練習、本当にぎりぎりの試合で「もう無理かな」と思えるところで最後の一歩を踏み出し、体を張れる選手がいる。「最後の3分」を命懸けでしのげる選手がいる。

こういう部分はW杯のような究極の戦いの渦中に放り込まないと、なかなか見えてこない。

もっとも、一口に「強いメンタリティーの持ち主」といっても、その表現の仕方は千差万別だ。見た目はやる気がなさそうな選手が胸の奥底にすごい負けじ魂を秘めていることがある。それとは正反対に、長友佑都(ガラタサライ)のように常に前向きなエネルギーを全身から放っている選手もいる。

長友(左)は常に前向きなエネルギーを全身から放っている=共同

長友(左)は常に前向きなエネルギーを全身から放っている=共同

チームをマネジメントする側は、そんな選手のそれぞれの個性を見抜いて、うまく組み合わせながら、チームの一体感を醸成し、結束力を高め、巨大なエネルギーに集約させていく。W杯ロシア大会で優勝したフランスのデシャン監督、戦前の大方の予想を裏切って快進撃を見せた日本の西野監督はそのあたりが実に巧みだった。

タレント発掘に必要な鑑定眼とは

長年にわたり、数多くの選手を見てきて思うのは、タレントの発掘と開発に必要な鑑定眼とは未来を見る力だということ。その選手の今、目に見えている力だけにひかれると失敗することが多い。

サッカーの世界でありがたいのは、スカウトが「これは」と目をつけた選手をずっと追いかけることができること。中小のクラブのスカウトは、ビッグクラブのスカウトが来たら獲得競争に太刀打ちできないし、その日本のビッグクラブも欧州のクラブが真剣に取りにきたらかなわない。そういうワールドワイドで厳しい人材獲得競争の中にいることは確かだが、どこにどういう選手がいて、どれくらいの力があるかは、ある程度まで「見える化」できているように思う。

そんなふうに考えると、日本の企業の新卒採用の方がいろんな意味で大変だなと思えてくる。採用のために用意されているのは、面接と試験とインターンシップくらいで、採ろうと思う学生がどれほどの力量の持ち主なのか、測れる機会、材料はそれほど多くないように感じるからだ。せっかく採用して、ようやく戦力になるまで育てたと思ったら、転職されることも増えていると聞く。サッカー選手なら契約期間内の移籍には違約金(移籍金)が取れるけれど……。

そういう意味で本当に理想的だと思うのはFCバルセロナとリオネル・メッシの関係だろう。13歳のアルゼンチンの少年が縁あってバルセロナにスカウトされ、そこで能力を最大限に開発された。人を育てることがクラブの未来を明るくし、その子の能力を最大限に引き出したことで選手からも感謝される。人の成長と組織の成功が完全にシンクロしている。たゆまぬ努力で世界ナンバーワンの選手になったメッシもすごいけれど、13歳のときから、ずっとメッシに「ここにいたい」と思わせるクラブで在り続けているバルセロナも本当にすごいと思うのである。

(サッカー解説者)

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