2019年6月21日(金)

勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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成功は小さな成長の積み重ねの先にある

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2018/10/26 6:30
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代表チームのサイクルは15歳で始まるが、日本サッカーのいわゆるエリート教育は、さらにその前から実は行われている。小学生までは普及を中心に考え、サッカーをエンジョイするのが最優先だが、中学生になると各地域で選手を選抜してエリートキャンプを実施しているのだ。そこからU-13やU-14の選抜チームをつくり、韓国との交流試合を行ったり来たりしながらやっている。優れた人材の発掘に関してはいささかの漏れもないように、それくらいの年代からウオッチし続けているわけである。

日本で「まれ」でも欧州では「普通」

この人材発掘と開発のサイクルは今後、低年齢化が進む可能性がある。

というのも、クラブレベルで最高峰の戦いといえば、欧州のチャンピオンズリーグ(CL)であるが、この舞台に出てくる選手の83%は17歳でプロデビューしているというデータがある。日本ではFC東京で久保建英(現横浜M)がJ3の試合に15歳と5カ月でデビューして大きな話題になった。それまでも、森本貴幸(当時東京V)や柿谷曜一朗(C大阪)、阿部勇樹(当時市原)、宇佐美貴史、堂安律(ともに当時G大阪)ら17歳までにプロデビューした選手はいた。彼らのデビューが大きなニュースになったのは、それが「まれ」だったからだが、欧州では「普通」になっているわけだ。

久保(手前右)はJ3の試合に15歳5カ月でデビューし、大きな話題になった=共同

久保(手前右)はJ3の試合に15歳5カ月でデビューし、大きな話題になった=共同

日本では大卒1年目の選手を「新人」と呼び、同年齢の高卒選手を「若手」と称するけれど、世界では若手を指すのはせいぜい10代までといわれている。そういう人材開発のスピードにどう食いついて引き離されないようにするか。日本の場合、高校受験や大学受験も絡んで難しい面は多々あるのだが、まだまだ改善の余地はたくさんあるように感じている。

17歳でプロにデビューするのが当たり前という世界では、ただ「うまい」とか「速い」とか「強い」だけの選手では難しい。ゴールを遠くに設定するメンタリティーがその選手自身にないと、若くして才に溺れ、周りにちやほやされて勘違いし、流されつぶれることになる気がするのだ。「技術」「戦術」「体力」と同等か、あるいはそれ以上に社会性が要求されると思っている。

プロとして、代表として、大成する選手が身体的な能力、プレーのスピード、ボールテクニック、ポジション取り、ゲームを読む力といった諸要素に優れたものを持っているのは間違いない。それら機能的な資質に加え、高い目標を掲げて初志を貫徹する粘り強い気質も一流選手は備えているものだ。高い目標を口にする割には意欲が長続きしない、口先だけの選手では話にならない。

ジュニアユースやユースから、あるいは中学や高校の部活動から、欧州のクラブや日本代表で活躍するようになるというのは本当の意味でケモノ道を行くようなものである。遭遇するものすべてが未知の連続になる。そうなると、ピッチの中での機能性とピッチの外での社会性の両方を兼備していないと、対処できるものではない。

サッカー選手が個人で成果を発表する芸術的な職業なら、自分の才能を最大限に売り込んでくれる敏腕マネジャーがいれば身を立てていくことは可能かもしれない。しかし、サッカー選手は仕事の大半をチーム、組織の一員としてプレーする。その際に周囲とコミュニケートする能力は必要不可欠だろう。協調性というか、ベンチに座ってチームメートの失敗を願うようでも、周りから「何を考えているかわからない」と思われるようでも困るのである。それではサッカーにおいて最も大事な「生かし・生かされ」という関係を十分には築けない。

サッカーの場合、機能的な部分の見極めは、コーチとして一定の鑑定眼があれば十分にできるだろう。

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