2018年11月15日(木)

「起業家ファースト」の実践
(WAVE)スクラムベンチャーズ代表 宮田拓弥氏

コラム(ビジネス)
スタートアップ
2018/10/29 6:30
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日本の上場企業で、時価総額が10兆円を超えている企業は何社あるだろうか?

スクラムベンチャーズ代表
日本と米国でスタートアップを複数起業後、ミクシィ・アメリカの最高経営責任者(CEO)を経て、2013年にスクラムベンチャーズを創業。50社超の米国のスタートアップに投資。

トヨタ自動車(23兆円)、ソフトバンクグループ(12兆円)、NTTドコモ(11.5兆円)、NTT(11兆円)のわずか4社だ。

この10兆円という数字を14年で達成し、今も毎年300を超える新しい創造性豊かな企業を生み出し続けているのが、米国のYコンビネーターだ。

「インキュベーター」と呼ばれるスタートアップ育成機関の先駆けで、エアビーアンドビー、ドロップボックス、ストライプなど、名だたる世界的なスタートアップを生み出し続けている。

シリコンバレーに本拠を置くYコンビネーターはこれまでの14年間で、1906ものスタートアップを育成している。ユニコーン(時価総額が10億ドル=1000億円を超える未上場企業)を16社も生み、トータルでの時価総額は10兆円を超えている。筆者もYコンビネーターの卒業生に多く投資している。

Yコンビネーターの成功のキーワードは「起業家ファースト」だ。

年に2回、世界中からスタートアップの参加を募る。書類選考とほぼ全員が元起業家であるパートナーとの面談を経て、1回当たりで150社程度の会社が選ばれる。

選考される企業のプロフィールは幅広く、地域は南米からアフリカまで、業種はソフトウエアが中心だが、ロボットなどのハードウエア、バイオ、医療系なども増えている。

選ばれた会社には7%分の株と引き換えに、約1400万円の資金が提供される。この資金を使い、このプログラムの一つのゴールである「デモデー」に向けて3カ月間、製品を開発し、営業活動をする。

「3カ月」はいかにも短いと感じられるかもしれない。しかしこの3カ月の間、Yコンビネーターは参加する起業家を徹底的に支援する。

有名起業家を招く週1回の参加者ディナー、4000人以上の卒業生のネットワーク、ベンチャーキャピタル(VC)のネットワークを通じて、製品やサービスの開発へのアドバイスだけでなく、直接的に40~50社程度の顧客も紹介してくれる。

デモデーはプログラムの最後に開かれる投資家を集めた発表会だ。グーグルの本社もあるマウンテビュー市のコンピューター歴史博物館の2階に、丸2日間、400~500人程度のエンジェル投資家やVCが一堂に会する。

デモデーは単なるイベントではなく、その場でどんどん投資が行われる。そこには厳格なルールがある。

投資家は「ハンドシェイクプロトコル」と言って、その場で「投資をしたい」という意思表示をすると、それが正式なものとみなされる。仮に後で「やはり投資しません」となると、ルール違反ということで二度とデモデーには呼ばれなくなる。これは起業家の時間を尊重し、少しでも時間を節約するための配慮なのだ。

起業家出身のパートナーが、様々なアドバイスをし、営業活動を支援し、資金調達を支援する。「起業家ファースト」で、世界中から集まる起業家の成功を後押しするための仕組みがそこにはある。

[日経産業新聞 2018年10月25日付]

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