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課題も少なくない新装パリロンシャン競馬場

5年ぶりに凱旋門賞実況

10月初旬、5年ぶりにパリを訪れました。日本からクリンチャーが参戦した凱旋門賞を現地で実況するためです。旧ロンシャン競馬場がスタンドの改修を終え、名称もパリロンシャン競馬場と変わってリニューアルオープンを迎えた今年、凱旋門賞も3年ぶりにパリに戻りました。2006年と13年、旧スタンド当時に2度、現地を訪れたことがあります。新スタンドがどんなものなのか、興味を持って現地入りしました。みなさんがご存じのレース結果については割愛し、今回は新装パリロンシャン競馬場にスポットを当てて、いろいろご紹介したいと思います。

風車に羽根がない?

パリの外れ、ブローニュの森の奥にあるパリロンシャン競馬場。そこへ向かう道中、景色には何の変化もなく、ここは全く変わっていないのかと思ったのですが、競馬場に近づき、凱旋門賞のスタート地点脇にある名物の風車を目にすると、ある驚きが……。なんと、羽根がなくなっていたのです。実はこの風車は競馬場の敷地外にあり、どうすることもできないそうなのですが、羽根のない風車を見たとき、一抹の寂しさを感じたものです。みなさんはレース映像をご覧になり、気づきましたか。

黄金色のパリロンシャン競馬場の新スタンド

いよいよ、パリロンシャン競馬場正門に到着。正門を入ると、そのまま通路が階段状になっていて、その先に新スタンドがあります。黄金色のスタンド、高さもあまりなく、大きさはそれほどではありませんが、以前の白を基調としたクラシカルなそれとはまるで違います。なんといいますか、街も非常にクラシカルで、歩いているだけで歴史を感じられるパリを思うと、どうしてもパリらしくない気がしてしまいます。新しい建造物ですからその点は仕方ないのでしょうが、やはり色による影響も大きい気がします。

コンセプトの一つに「緑」

特徴として私が強く感じたのは、木の床のテラス部分、そして緑が多いこと。スタンド裏はもちろん、1コーナー方向に向けてもテラスが伸びていて、その前にコンクリートではなく、芝生が敷き詰められています。スタンドとコースの間も同様で、一面に芝生が敷き詰められています。コンセプトの一つに「緑のパリロンシャン」というものがあるようで、以前に比べ競馬場内の緑は3倍になったとか。天気がよければスタンド前の芝生に寝転がってレース観戦なんてよさそうです。そんなところからも日本の競馬場にたとえるなら、リゾート感のある札幌と函館に近いような気がしています。

コース前にも芝が張られ、緑が多くなった

スタンド内の一般席、一番下は木の階段構造になっていて、そのまま腰かけてレースを観戦できます。凱旋門賞当日のように、大勢の観客が詰め掛ける日の観戦は大変でしょうが、そうでないときなどスタンド前の芝生同様、高さはありませんが、ここからの観戦でも十分に快適だろうと感じました。その一つ上のフロアも木のベンチ席になっていて、同様に高さはそれほどありませんが、十分快適にレース観戦ができそうです。

トイレや馬券売り場が不足

非常によさげな話をいろいろ述べてきましたが、この新スタンド、混雑した凱旋門賞当日には問題点が浮かび上がったようです。まずはトイレの問題。トイレの数が少なく、男子トイレですら長い行列ができてしまうありさま。これは実際、私も体験したのですが、男子トイレの入り口に階段まで及ぶ数十メートルの行列ができている光景には、さすがに驚きました。加えて、馬券売り場や飲食店も少なく、かなり混乱していたという感想を、多くの方から現地で聞きました。そして、屋根のあまりない構造となっているため、雨が降ると雨宿りが大変。幸い、雨予報だった当日も人のまだ少ない、早い時間に降った程度でしたからよかったものの、大雨なら一体どういうことになっていたのでしょうか。

歓声に送り出されて馬場入りする凱旋門賞出走各馬

新競馬場はスタンドだけでなく、肝心なコースや馬場状態にも問題が多々あるようです。これは春の開幕時からあれこれいわれていましたが、10月は後半の開催が他の競馬場に振り替えられるなど、待ちに待ったはずのリニューアルオープン初めの18年は、多くの課題が浮上したといわざるを得ない状況です。19年に向けて、こうした課題が一つひとつ確実に改善されることを切に願います。

やはり格別なビッグレース

久々に現地で凱旋門賞を観戦し、改めてやはり素晴らしいものだと感じました。順番に、静かにコースへと馬が入っていく入場時の光景、レース発走時にひときわ大きく上がる歓声、走り終えた各馬を迎えるスタンドからの温かい拍手、そして最後に引き揚げてくる勝者をたたえる大きな拍手と歓声。競馬の主役である馬、そして携わる人への尊敬の念が現地にいると非常に強く感じられ、これは世界のビッグレースの中でも凱旋門賞ならではの独特なものと、私は感じています。

レースを終え、戻ってきたクリンチャーと武豊騎手

日本競馬の悲願とされる凱旋門賞制覇。目標に向け、来年以降も挑戦は続くことでしょう。その瞬間を現地で見ようと、パリを訪れる日本のファンはこれからもきっと多いと思います。そのとき、レースも関係者の不満のない良好なコンディションの下で行われ、ファンの観戦も快適、誰もが幸せになれるパリロンシャン競馬場であってほしいものです。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 中野雷太)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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