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W・ヘーゲンが贈る勝利へのゴルフゲーム術(3)

 優勝以外に価値はないと勝利にこだわり続け、自分の価値を最高に上げ、名声をほしいままにしたウォルター・ヘーゲン(米国)。試合では常に大立ち回りを演じ、観客を引きつけ、スターとして君臨した。エキシビションマッチを成立させ、観客から入場料を得られるようにし、プロの生活を成立させた。プロとは何か、何をすべきかをわきまえ、すべてを行ったヘーゲンはスイングやショットにこだわりをもたず、ひたすらゲームすること、優勝するためのスコア作りに精力を注いだ。彼のゲーム哲学を学ぼう。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ VOL.40」から)

ヘーゲンの教え その5

 「強風でのプレーの仕方を学ぶべし。アゲンストは低い球で攻める」

ヘーゲンは全英オープン選手権初挑戦に惨敗し、さらに翌年の2回目もリンクスに打ちのめされた。ゴルフの起源、セントアンドリュースに敗北したのだ。

「全英オープンのために、米国のシーサイドコースをいくつか巡ったが、風が吹きさらす本場英国のリンクスとは天と地の違いがあった。しかも、全英オープンを制しなければ、世界から真のチャンピオンとは認めてもらえない。それは英国のリンクスこそ、ゴルファーの真の技量が試されるからだ」

そう思うヘーゲンは、強烈な風の対策を本気で講じた。全英オープンに6度優勝したハリー・バードンや5度優勝のJ・Hテイラー、ジェームス・ブレードのプレーを研究した。

「ティーショットは距離を得るよりも低いボールを打つこと。アゲンストの風に突き刺さるショットだ。セカンドショットは高くボールを上げずにピッチ・アンド・ランを多用すること。これらをマスターするのだ」

こうしてティーを低くし、ピシャッとたたく打ち方に取り組んだ。グリーンへのショットはウエッジを封印、体とボールを近づけて低いボールを打つようにし、グリーン手前の花道から転がしてのオン。さらにはスライスとフックを覚え、横からの風にぶつけて流されないようにした。

こうしてヘーゲンは全英オープンに3年続けて3度目の挑戦を行った。1922年、ロイヤルセントジョージズ。

そこには暴風雨のティーグラウンドに立ち、憤然と胸を反らせ、敢然と立ち向かうヘーゲンの姿があった。

第3ラウンドを終えて2位につけたが、最終ラウンドでは13番で絶体絶命のガードバンカーに入れてしまった。非常に速いグリーンが左に傾いており、ピンは奥。ボギーは確実だった。

「優勝するにはここで『4』をとる必要があると確信した。イチかバチかの勝負をするしかない。ウエッジのエクスプロージョンではカップに寄せることはできない。7番アイアンでクリーンに打ち、右に落として転がすことだ」

ヘーゲンはそう決断し、実行。きっちり寄せて「4」をとり、1打差をつけて全英オープン初優勝を成し遂げたのだ。

ヘーゲンの教え その6

 「自分のリズムで慌てず騒がす、ゆったりと。やさしいときは繊細に、難しいときは大胆に」

ヘーゲンはマッチプレーのメジャー大会、全米プロ選手権に5回も優勝している。それは試合巧者であるからにほかならない。

「私は戦略家であり、心理学者である」

ヘーゲンは自らをそう言っている。競技の世界が勝負事である以上、相手の精神状態を見極めて、コースをどう攻めるかを判断する必要がある。

「ゴルフでは常に自分のリズムを保つこと。心乱さず、平静心を維持し、我慢強く戦う。安全を旨としながらも勝負時がきたら一気に仕掛ける。私はそういうことがすべてできる人間である」

こうした絶対的な自信が、さらなる自信となって王者として君臨することができたのだ。ヘーゲンよりも素晴らしいショットを放つ選手を次々となぎ倒して勝利を収めた。

「朝起きたら、ゆっくりと身支度を整え、朝食をゆっくりと取る。コースにもゆっくり到着して、ゆっくりと大股で歩き、時間通りに笑顔でスタートティーに立てばいい。慌てたり急いだりする必要などどこにもない。自分のリズムでプレーできるようにすることが肝心なのだ」

しかし、相手はといえば、早くコースに到着し、熱心に練習ボールを打ち、今か今かとそわそわしてティーグラウンドでヘーゲンを待つ。時間ギリギリまで現れないことにイライラまで高じてしまう。そうして初っぱなからミスショットをしては、もはや早くもヘーゲンの勝利が決まってしまうのだ。

しかし、それでも何とかうまくスタートでき、自分はナイスショットし、ヘーゲンがミスショットをしたとする。実際にそうしたことは多いのだが、ヘーゲンはリカバリーが抜群にうまい。アイアン巧者であり、様々なショットを駆使できるからだ。こうして、相手は優位に立ちながらも心的圧迫を受け、徐々に追い詰められてしまう。

「難しい状況のショットは簡単に打ち、やさしいショットは難しく打つ。それは大胆さと繊細さの使い分けであり、うまくプレーするコツなのだ」

ヘーゲンは最後の勝負どころでスーパーショットをお見舞いし、ウルトラパットを決めて、相手の息の根を止めてしまうのだ。

(次回掲載は11月12日付予定、文:本條強、イラスト:サイトウトモミ)

 WALTER HAGEN 1892年12月21日、米ニューヨーク州ロチェスター生まれ。180センチ、80キロ。ニックネームはヘイグ。7歳のときにロチェスターCCのキャディーとなり、19歳でクラブのヘッドプロとなる。1913年に全米オープン選手権初挑戦で2位となり、翌14年に優勝、19年に2勝目を挙げる。全英オープン選手権は20年に初挑戦し、53位と惨敗、2年後の22年に初制覇。その後3回の優勝を成し遂げる。全米プロゴルフ選手権は21年に初優勝し、その後4回の優勝を遂げる。米ツアー通算45勝は歴代8位。メジャーは11勝で歴代3位。ゴルフウエアにこだわり、当代随一のだて男であり、観客を大いに引きつけるエンターテイナーだった。

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