2018年11月14日(水)

サウジ記者殺害は「計画的犯行」トルコ大統領が見解
皇太子関与は言及せず

サウジ記者殺害
中東・アフリカ
北米
2018/10/23 19:12 (2018/10/24 0:53更新)
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【イスタンブール=佐野彰洋】サウジアラビアの著名記者がトルコで死亡した事件で、同国のエルドアン大統領は23日に演説し「計画的な殺害だった」と言明した。工作員の過ちとするサウジ側の説明を否定し、事前に準備された組織的犯行との見方を示した。焦点である最高実力者ムハンマド皇太子の関与には言及しなかったが、全容解明へ指導部の説明を要求。事態収拾の行方は見通せず、中東情勢の不安定要因としてくすぶりそうだ。

エルドアン氏が事件の見解を示すのは、サウジ政府が総領事館内での死亡を認めて以降初めて。

サウジ政府の言論弾圧などを批判してきたジャマル・カショギ氏は2日にトルコの最大都市イスタンブールのサウジ総領事館内で殺害された。

サウジは当初殺害を否定するなど説明を二転三転させてきた。エルドアン氏は「一部の治安・情報要員に責任を押し付けるだけでは、我々も国際社会も納得しない」と迫った。サウジが事件に絡んで拘束した実行要員ら18人について「イスタンブールで裁かれるべきだ」とも述べ、引き渡しを要求した。

遺体の行方など解けぬ疑問への対応を迫られた立場のサウジは23日、サルマン国王主宰の閣議を開き、国営メディアが「真実を明らかにし、義務を怠った者の責任を問う」と発表した。国王と皇太子が同日に首都リヤドの宮殿でカショギ氏の遺族と面会した映像も報道。「深い弔意と同情」に遺族は感謝を示したという。両者に緊張関係が生じていないことをアピールする意図とみられる。

だが、国際社会の不信と不満を解くのは容易ではない。ドイツのメルケル首相は22日、サウジへの武器輸出凍結を表明した。独政府は他の欧州連合(EU)加盟国にも同調を求めている。カナダのトルドー首相も同日、武器禁輸の用意があると明らかにした。

当初は同盟国であるサウジの説明に理解を示していたトランプ米大統領も22日、サウジ側の説明に「満足していない」と述べた。サウジ擁護の姿勢はなお崩していないものの、急きょハスペル米中央情報局(CIA)長官をトルコに派遣。捜査情報の共有を求め、米国としても事実関係を直接確認のうえ、事態収拾に積極関与する構えをみせ始めた。

前代未聞の事件は今後の全容解明に向けた動き次第で、中東情勢の不安定化につながる。皇太子の関与説が晴れなければ求心力の低下は必至で、サウジ王室内部の権力闘争を再燃させるおそれがある。米国ではサウジとの関係見直しを求める声が与党共和党内にも根強い。イスラエルとともにサウジとの同盟関係をイラン封じ込めの基軸に据える米国の戦略が揺らぐと、地域のパワーバランスに変化をきたす。

サウジへの国際社会の視線が厳しさを増せば、原油相場を通じて世界経済にも影響が波及しかねない。サウジは事件を巡って制裁を受ければ対抗する姿勢を14日に国営通信で表明した。後にファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は安定供給を強調し、火消しに回ったものの「報復で石油を禁輸しかねないとの懸念が市場に残る」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之首席エコノミスト)。

米国の経済制裁ですでにイランの原油輸出は減っている。穴埋めへ供給余力の大きいサウジが増産を拒めば、逼迫の懸念は増して原油相場に上昇圧力がかかる。事件を巡るサウジの出方と中東情勢の流動化を市場は不安視し始めている。

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