2018年11月14日(水)

台湾脱線事故、公営鉄道の経営にゆがみ 2年で7回発生
安全管理に疑念 慢性赤字、組織も硬直化

中国・台湾
2018/10/23 17:30
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【台北=伊原健作】台湾の北東部宜蘭県で18人が死亡した特急列車の脱線事故を巡り、運行を担う公営鉄道「台湾鉄路管理局」(台鉄)の経営体質を問う声が出ている。過去約2年で計7回の脱線事案が発生。今回の事故原因は未確定だが、経営難による安全対策の不備への疑念が強まる。事故が起きた路線は日本や欧米など海外からの観光客も多く利用するだけに、再発防止の成否が国際的な関心を集める。

台湾の特急列車の脱線事故現場(22日、宜蘭県蘇澳の新馬駅)

台湾の特急列車の脱線事故現場(22日、宜蘭県蘇澳の新馬駅)

台湾メディアは22日までに、事故が起きた新馬駅ホームの監視カメラの映像を報じた。猛スピードでカーブに突入した「普悠瑪(プユマ)号」は砂ぼこりを巻き上げ横転。電柱が引きずり倒され激しく火花が散った。

事故原因は速度を出し過ぎた運転士の人為的ミスとの見方が浮上している。ただ運転士が事故直前に動力機関の異常を訴えるなど、車両・設備の整備を含めた安全管理体制に疑念が出ている。

銘伝大学の馬士元助教授(都市計画・防災)は、台湾当局は華々しいインフラ整備に多額の資金を投じる一方、老朽設備の維持費用を出し渋り、補修人員が不足していると指摘する。加えて「台鉄の組織は古く硬直的で、安全管理の意識が劣っている」とも断じる。

台鉄では過去2年に線路の腐食などで7件の脱線事案が発生した。被害は軽微で責任はうやむやとなったが、今回の惨事は台鉄のゆがみを改めて浮き彫りにした。

在来線をほぼ一手に担う台鉄は慢性的にコストが先行している。2017年12月期の最終損益は15億台湾ドル(約54億円)の赤字で、開示資料を遡ると赤字は少なくとも21年連続。政治的圧力で運賃を安く抑えられているのも足かせだ。

台湾は中心部を縦断する山脈が東西を分ける。人口2300万人のうち大部分は発展した西側に偏る。東側は宜蘭・花蓮・台東の3県合計でも100万人あまり。「忘れられた土地」と呼ばれる東側を含め全土をカバーする台鉄の負担は重い。

また台鉄は国民党独裁政権時代から続く硬直的な経営組織が問題視されてきた。過去約30年間も改革に向け民営化が取り沙汰されながら、内部の反対などで実現していない。ある専門家は「複雑な経営問題を見直す時に来ている」と話す。

台湾では07年に開業した台湾高速鉄道(台湾新幹線)の運営会社が当初の見積もりの甘さから経営難となり、15年に当局から救済された。ただ運輸大手など民間が出資し、当局直轄の台鉄と経営は異なる。新幹線は西側の大都市をつなぐ路線の好調で業績は持ち直し、16年に現地で上場した。

台湾の東側は花蓮の太魯閣(タロコ)渓谷をはじめ景勝地が多く、日本や欧米、東南アジアなど多くの外国人観光客が台鉄を利用する。今回の事故は運転士個人の責任などで幕引きされるのか、抜本的な再発防止に発展するのか。行方を注視するのは台湾人だけではない。

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