2019年8月26日(月)

エンジンだけじゃない、マツダがこだわる地味テク

日経産業新聞
2018/10/24 6:30
保存
共有
印刷
その他

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

マツダはカーブ走行や急な車線変更の際の自動車のふらつきを抑え、運転者への負担を減らす新技術を開発した。運転者のハンドル操作の動きをもとにエンジンの力を調整する制御とブレーキを制御する。11月に部分改良して発売する主力SUV(多目的スポーツ車)の「CX-5」から順次搭載する計画だ。

搭載を決めたのは2016年に投入した「ジーベクタリングコントロール」の改良版「ジーベクタリングコントロール・プラス」だ。日立オートモーティブシステムズと共同で開発した。従来はハンドル操作の動きなどの情報をもとにエンジンの力を抑えて車への遠心力のかかり方を調整していた。高速でカーブにさしかかったときに、カーブの外側に乗員の体が引っ張られたり、車両がふられたりする負担を軽減する。

「いままではエンジン制御だったが、今回、ブレーキも制御対象にした」。「CX-5」の開発責任者を務める松岡英樹主査は説明する。これまではカーブの入り口で車両の動きを制御してきたが、ブレーキまで制御することでカーブの出口でも運転者にかかる負荷を減らし、車両を安定させられるようになった。

カーブに入る時のほか、直進に戻る時も曲がるためにハンドルを大きくまわす。カーブ出口で元の位置に戻すときにも車両と運転者には力がかかっている。その際、ハンドル操作の動きを検知し、瞬時に外側のタイヤにブレーキをわずかにかけることで逆向きの力を生み出し、乗員と車両にかかる力を減らす。

外観は変わらないが、改良型の「CX-5」にはこだわりの車両制御技術を初搭載している

外観は変わらないが、改良型の「CX-5」にはこだわりの車両制御技術を初搭載している

この技術を初搭載するのはマツダにとって売れ筋の主力SUV「CX-5」。全面改良した12年と比べると全車種に占める販売構成比率は2倍となり、台数も2.5倍に拡大している。17年には世界販売の4分の1以上を占めるマツダの現行車種の中心となっている。

押しも押されもしない主力となったCX-5に今回の車両制御技術を初めて搭載するあたりに新技術へのこだわりが見える。部分改良するCX-5は駆動機構(パワートレーン)の拡充が目玉だが、車両制御の面のこだわりも負けていない。

■指名買いは期待薄だが……

「ほら、乗っている人がぶら下げているネームプレートの揺れが少ないでしょ」。松岡氏は新旧のジーベクタリングの車内の運転者の様子を比較撮影した動画をみながら胸を張った。明らかに乗員にかかる力は少なくなっている。視覚的には差がわかりにくいが、とっさの時や長く乗った際に大きな差がありそうだ。

日常的にカーブを曲がる時に車両を安定させ、運転者にかかる力を減らす。突発的に障害物を避けなくてはいけない時の緊急回避時に車両が安定する。雪道など滑りやすい路面でも走行の安定に貢献するこの技術の根底にあるのは「人間中心で、クルマと人の一体感が感じられるようにしたい」という思想だ。

視覚的に見せようとしても限界のある地味な技術ではある。マツダ車を選ぶドライバーにはディーゼルやターボエンジン車の指名買いが見られる。ただ「ジーベクタリング」技術の指名買いは期待しにくい。それでも技術を進化させた。

将来の次世代車に単純に転用できないとしても、ここで終わる技術ではないという確信がマツダにはある。例えば電気自動車(EV)は電子機器のため、タイヤを回すための力をコントロールしやすい。

パワートレーンとブレーキを緻密に調整することで、車両全体を細部まで制御するといった技術や開発ノウハウはこうした細かい乗り心地の改善過程でも強みになる。一見地味な技術だが汎用化とは一線を画し、ファン固めにつながる個性的な次世代車開発に生きる可能性を秘める。

(企業報道部 湯沢維久)

[日経産業新聞2018年10月24日付]

「日経産業新聞」をお手元のデバイスで!

 スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できるようになりました。申し込み月無料でご利用いただけます。

 
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。