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株、604円安の背後に「3つの理由」

証券部 松本裕子

日本株の振れ幅が拡大している。23日の東京株式市場で日経平均株価は前日比604円安の2万2010円78銭まで急落した。日経平均が2万4270円の27年ぶり高値を記録したのは、わずか20日前の10月2日だった。それから11日の915円安を挟み、気がつけば2万2000円割れ寸前。月間の日経平均の値幅(高値から安値を引いた値)は2259円に達した。起点は米国の長期金利の上昇だが、世界の金融市場はそれをきっかけに1つ1つの材料に大きく反応する「乱気流相場」に入った。

今日の下げの理由は3つ。1つは底流として存在する中国懸念の再燃。そこに新しい懸念材料として「サウジリスク」が加わった。こうなると、値動きそのものを投資材料とする投資家たちの「売りトリガー」がひかれ、一段と下落を加速する市場のメカニズムが発動された。

「中長期の投資家の買いの手が止まっている」。国内大手証券のトレーダーはいう。23日は朝方から売り注文が優勢で、心理的な節目の1つ、2万2500円をあっさり下回った。その後もほぼ一本調子で下げ幅を拡大し、この日の安値圏で取引を終えた。

ベースにあるのが中国への懸念だ。中国の7~9月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前年同期比6.5%と9年半ぶりの低さになった。米中貿易摩擦の悪影響が一因だが、「本格的に出てくるのは10~12月期以降」(UBS証券の青木大樹氏)といい、さらなる景気減速への警戒感が広がる。

週末をまたいで発表された中国当局からの「株価維持策(PKO)」ともいえる施策の数々にも関わらず、中国株市場の下げがきついのも重荷だ。中国では金融機関が株式を担保にしたローンを出しているといい、「株安が金融システムへの不安につながる」(BNPパリバ香港の岡沢恭弥氏)構図。中国経済が一段と減速すれば、世界経済全体の下押しにもなりかねない。

きょうのマーケットの注目材料として浮上したのが「サウジリスク」だ。サウジアラビア政府に批判的な記者が殺害された事件を巡り、米国内でも批判が高まっている。仮に米国がサウジに対し経済制裁をすれば、「サウジが報復として、原油価格の上昇を促したり、保有する資産の売却に動いたりするリスクがある」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成氏)と警戒する。原油価格の上昇はエネルギー輸入国である日本などにマイナスになる。加えて、金融市場の「巨大投資家」であるサウジが保有株などを売るとなれば、需給面での悪影響も大きい。サウジによる資産売却懸念から、22日の米市場では金融株が軒並み安。23日の東京市場でもソフトバンクグループ株が3%安になった。

最近の市場は振れ幅を拡大する「増幅装置」の存在抜きには語れない。例えば、リスクパリティと呼ばれる戦略は株式や債券などの「変動の大きさ」に着目して投資する。株式の変動が大きくなれば自動的に保有株を売却する。株価が振れるほど、リスクパリティの売りが起き、さらに株価が振れるという展開になりやすい。相場の流れに追随する戦略を持つCTA(商品投資顧問)も一種の増幅装置の役割を担うことがある。株安の傾向が強まれば、保有株を売ったり新規の売り持ちをしたりするためだ。23日も市場の一部では「CTAのような機械的な売りが先物に出ていた」(外資系証券)との声があった。

個別株の買いと売りを組み合わせるロングショートファンドが保有株の売却に動いたことも一因だ。9月半ば以降、相場上昇を期待して買い持ち高を増やしていたが、想定外の急落を受け、一気に買い持ち高を縮小した。今回の急落で痛手を受けたファンドも多く、今後、解約売りが出るリスクもある。

日経平均は予想PER(株価収益率)などの面から見れば割安感も出てきた。だが、「中国やサウジなど複合的な要因が重なっており、今は積極的に買い向かいづらい」(国内運用会社)のが投資家心理だろう。「2万2000円が下値」(JPモルガン証券の阪上亮太氏)との声が多いものの、「仮に中国の状況悪化や米株安が加われば2万1000円まで下げる可能性もある」(BNPパリバ香港の岡沢氏)。当面、不安定な値動きが続きそうだ。

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