ロシア、核の威嚇が「誤算」 米の廃棄条約離脱表明

2018/10/22 19:03
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【モスクワ=古川英治】トランプ米大統領が米国と旧ソ連が結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を表明したことで、ロシアのペスコフ大統領報道官は22日、米国が条約を破棄し核戦力の増強に乗り出せば、対抗措置をとる用意があることを示唆した。トランプ氏はロシアが同条約に違反していることを破棄の理由にあげた。ウクライナ侵攻を機に欧米を核戦力で威嚇してきたロシアのプーチン政権に「誤算」が生じてきた。

ボルトン氏は中距離核戦力(INF)廃棄条約の離脱についてロシア側と協議=ロイター

ボルトン氏は中距離核戦力(INF)廃棄条約の離脱についてロシア側と協議=ロイター

ペスコフ氏は、米国が条約を破棄し核戦力の増強に乗り出せば「ロシアは安全保障のため行動を強いられる」と述べ、対抗措置の用意があることを示唆した。ロシアは条約違反を否定している。

モスクワ入りしたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は22日、INF廃棄条約についてロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と会談した。タス通信によると、ロシア安保会議の報道官は両氏が「国際的な安全保障問題について幅広く議論した」と明かした。ボルトン氏は23日までモスクワに滞在。ラブロフ外相やプーチン大統領とも面会を予定する。

米国は2014年、ロシアがINF廃棄条約に反する新たな地上発射型巡航ミサイルを実験したと指摘し、17年から配備したと非難していた。ロシア側はこれを否定し、逆に米国が東欧に配備したミサイル防衛システムが攻撃に転用されれば条約違反になると主張した経緯がある。

ロシアの違反の真偽はともかく、プーチン政権が核戦略を強化してきたことは確かだ。北大西洋条約機構(NATO)に差を付けられた通常兵器の劣勢を補うためで、核の近代化でロシアは米国を20年先行しているとの米専門家の見方もある。

ロシアは14年のウクライナ侵攻から核による威嚇を繰り返してきた。クリミア半島の武力併合の際に「(核を使う)用意があった」とプーチン氏が発言。核兵器使用を想定した軍事演習を再三実施し、シリアでの軍事作戦では核兵器を搭載可能な巡航ミサイルを投入した。プーチン氏は3月の年次教書演説でも大々的に新型核兵器の開発を披露している。

核戦略の誇示は対ロ制裁を発動した欧米に心理的な圧力を掛けて譲歩を引き出す狙いで、プーチン氏は軍拡競争は否定してきた。経済は停滞し、米国との軍拡競争の末に崩壊したソ連の二の舞いを演じかねないからだ。米国が実際にINF廃棄条約破棄に踏み切れば、ロシアにとっては大きな計算違いともいえる。

INF問題を含め、ロシアの威嚇行動がトランプ政権に逆手に取られている面もある。同政権は2月に発表した「核体制の見直し(NPR)」でロシアなどへの対抗の名目で核のテコ入れを鮮明にした。通常兵器への反撃として核兵器を使用する選択肢の提示や小型核兵器と巡航ミサイルの開発など、ロシアが追求してきた戦略と重なる。

ロシア外務省は21日、米国のINF廃棄条約破棄は「危険な一歩だ。受け入れられない」と非難しながら「対話の余地はある」とも表明した。

16年の米大統領選での共謀疑惑にさらされるトランプ氏とプーチン氏はこれまで核軍縮を軸に米ロ接近に向けた米国内外の世論を形成し、関係修復を目指した。トランプ氏のINF廃棄条約を巡る発言により国際的な危機感が高まれば、逆に米ロ対話の道が開けるとの読みもありそうだ。

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