2019年3月20日(水)

次世代車が促す部品再編 FCA、部品部門の売却発表

2018/10/22 18:24
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【フランクフルト=深尾幸生】欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は22日、自動車部品部門のマニエッティ・マレリをカルソニックカンセイに売却すると発表した。売却額は62億ユーロ(約8千億円)。自動運転車など次世代車の開発競争が激しくなり、完成車メーカーが部品メーカーを傘下に置く「ケイレツ(系列)」の解体が広がっている。

米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下で、カルソニックカンセイの親会社のCKホールディングスが買収する。カルソニックカンセイとマレリは経営統合し、新会社の名称は「マニエッティ・マレリCKホールディングス」とする。FCAは複数年の供給継続契約を結ぶ予定だ。

新会社の売上高は約2兆円と、独立系の部品メーカーで世界10位に入るとしている。アジアに強いカルソニックカンセイと欧州に強いマレリの統合で、部品メーカーに近年強く求められるようになった全世界での部品供給能力も補完できる。

FCAにとってマレリは数年前から非中核事業と位置付けられてきた。7月に死去したセルジオ・マルキオーネ前最高経営責任者(CEO)はマレリ売却を公言し、韓国サムスン電子と売却交渉を進めたとされる。

マルキオーネ氏の後を継いだマイケル・マンリーCEOは声明で「マレリの潜在力を十分に発揮できるような選択肢を慎重に検討した」と売却の意義を説明した。FCAは外部のリソースを活用し開発費を抑える戦略をとっており、マレリの重要度は低下していた。

一方、自動運転の分野では、米グーグル系の自動運転開発会社ウェイモや、米アプティブ(旧米デルファイ・オートモーティブ)と提携。6万台以上をウェイモのロボットタクシーサービスに供給するほか、6月にはウェイモの技術を搭載した自社ブランドの自動運転車の生産に向け協議を開始した。

大手自動車メーカーは「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ばれる自動車業界の新潮流を見据えて、ケイレツを解体・再編する一方、異業種と提携し、事業や技術の領域の選択と集中を進めている。

トヨタ自動車は10月、ソフトバンクと自動運転など次世代車の開発で提携すると発表。デンソーアイシン精機などが自動運転や電動車関連の開発会社を設立するなどケイレツの部品メーカーの組織再編も進める。

独フォルクスワーゲン(VW)もグループ内に散らばる部品・調達部門を一部門として19年1月に集約・独立させる。新部門は独立採算制をとり、VWグループ以外にも部品を販売する。ホンダがゼネラル・モーターズ(GM)と自動運転で提携するなど完成車メーカー同士の合従連衡も起きている。

「100年に1度」とも言われる自動車業界の大変化のなかで、ケイレツの解体が改めて進み、再編の呼び水になっている。

自動運転や電動化といった次世代車の技術開発を巡り、部品メーカーのM&A(合併・買収)も活発になってきた。電気自動車(EV)では部品点数は大幅に減り、これまでのようにケイレツの完成車メーカーに部品を納めるだけでは生き残れない。規模を拡大して自動運転や電動化の研究開発に投じる資金を確保し、保有する技術の幅を広げるために再編は不可欠になっている。

カルソニックカンセイはもともと熱交換器やマフラーなどエンジン回りの部品が主力だった。日産自動車のカルロス・ゴーン会長が2000年代に進めたケイレツ解体では対象外だったが、17年に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下に入り、日産自動車の系列を外れた。

EVが普及すればエンジン回りの部品は必要なくなる。カルソニックカンセイはすでに電子部品に事業の軸足を移しており、自動運転に対応した次世代コックピット製品などの開発に力を入れる。マレリは電子制御装置(ECU)に強みを持ち、車載通信システムなど「つながる車」に活用する製品を開発する。元・親会社の傘の下を離れて、統合で規模を拡大することで、世界中の自動車メーカーに、開発した新技術を販売できるようになる。

カルソニックカンセイが日本の自動車関連で過去最大の巨額買収に踏み切れたのは、KKRの資金力を活用できたことも大きい。詳細は明らかにしていないが、今回の買収にあたってKKRが追加の出資を実行したようだ。投資先であるカルソニックカンセイの企業価値向上を目指し、将来的なリターンの拡大を狙う。

自動運転などの登場を受け、自動車部品業界ではM&Aが相次ぐ。独ボッシュは相乗りサービスを手がける米スタートアップ企業のスプリッティング・フェアズ(SPLT)を買収し、ライドシェア事業への参入を発表した。カナダのマグナ・インターナショナルは16年に車載通信システムの独テレモーティブなどを買収。独ZFも15年、米自動車部品大手のTRWオートモーティブを買収し、業界再編をけん引する。

KKRはケイレツの解体に伴う事業再編や大規模買収の支援は「投資ファンドとして好機」とかねて主張している。低金利を背景に年金などから委託された資金も豊富で、17年には日本を含むアジア地域に投資をするものとしては過去最大級の約1兆円のファンドを立ち上げた。市場環境の変化と潤沢なマネーが組み合わさり、今後も業界再編の動きは続きそうだ。

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