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愛ちゃんの計り知れない貢献 卓球人気に競技力向上

卓球の福原愛(ANA、29)が21日、自らのブログで現役引退を表明した。団体銅メダルを獲得した2016年夏のリオデジャネイロ五輪後に結婚と出産を経験。事実上競技の第一線から遠ざかっていたこの2年間を「これからも卓球界を引っ張っていくため、子育てをしながら競技を続ける必要があると思っていました」と複雑な心境で過ごしてきたという。そんな現役への思いを変えさせたのは「次世代の選手たちが成長」ともつづった福原。人気と実力を兼ね備え、現在へと続く卓球ニッポンの強さと人気の下地を作った貢献度は計り知れない。

仙台市出身の福原がラケットを握ったのは3歳9か月の時。指導熱心な母親のもと猛練習を重ね、テレビ番組で泣きながらボールを追う「卓球の愛ちゃん」はすぐに国民的な人気者になった。実力も抜群で、全日本選手権では多くの最年少記録を塗り替え、14歳で初出場した03年の世界選手権個人戦でシングルス8強入りするなど早くから国際舞台でも活躍した。五輪には04年アテネ大会から4大会連続で出場し、12年ロンドン五輪で団体銀メダル、16年リオデジャネイロ五輪で団体銅メダルを獲得するなど名実ともに長く日本の「顔」だった。

こうした輝かしい実績もさることながら、その足跡が後進に与えた影響はさらに大きいと言えるだろう。福原が出てきた当時はマイナー競技だった卓球界で、高い知名度を生かしてわずか10歳でプロ宣言。多くのスポンサーを獲得して競技に打ち込む環境を整えた。高校時代には世界最高峰の中国超級リーグに挑戦し、中国語も習得、中国から専属コーチも雇った。

これらは石川佳純(全農、25)や伊藤美誠(スターツ、18)、平野美宇(日本生命、18)といった現在のトップ選手が今では当たり前のように取り入れている。ロンドン五輪で日本卓球史上初めてのメダルを獲得し、卓球選手の知名度も大きく向上。男女を問わず、選手がテレビCMなどに登場することも珍しくなくなった。

日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長は「アイドル的存在だった福原を見て、石川ら日本中の子供が『第2の愛ちゃん』を目指した。特に保護者が熱心になったことでまず女子の卓球界が変わり、刺激を受けた男子にも好影響をもたらした。『卓球をしている』と話すことが恥ずかしくない時代を作ってくれた」と振り返る。

幼い頃から反復練習を繰り返す姿を見て、日本協会も1990年代以降、組織的にジュニアの育成を始めた。その育成システムはその後、日本オリンピック委員会(JOC)によるエリートアカデミーという形に結実し、女子の平野や男子の張本智和(15)らトップ選手を輩出している。

恵まれた環境の中で成長を重ねた選手たちは国際舞台で躍進を続け、今春の世界選手権団体戦(スウェーデン)で女子は銀メダルを獲得。決勝で中国に破れはしたものの、伊藤が1勝を挙げるなどその距離はかつてないほど縮まりつつある。

一方、16年9月にリオ五輪台湾代表の江宏傑選手との結婚を発表し、昨年10月に女児を出産した福原がその後も現役引退について明言をしてこなかった。第一人者としての強い責任感があったからだろう。

だが五輪2大会を共に戦った石川に加え、「愛ちゃん」を見て卓球を始めた一回り近く若い世代、伊藤や平野らも台頭して層が厚くなった今の卓球界を少し離れて眺めるうち、その責任感はじわりとほぐれていったようだ。「選手としてできることはやり切った、頑張り抜いた、という思いが強くなり、自分が選手としての立場でやるべき使命は果たせたかな、と感じるようになりました」「もう私が選手として卓球界を引っ張っていかなくても大丈夫、後輩たちがさらに飛躍し、日本代表として頑張ってほしい、という想いです」。ブログに並ぶ言葉には頼もしくなった若手への期待感がにじむ。

自身を「生涯卓球人」と表現した福原は今後について「これまで以上に若い世代が成長しやすい環境を作るなど、私が卓球界、スポーツ界に貢献していけるのでは」などとつづった。今月24日に開幕する卓球の新リーグ「Tリーグ」を運営する一般社団法人では理事を務め、すでにPR活動などで積極的に関わっている。先駆者としての経験を生かし、新たなフィールドでも活躍していくに違いない。

(鱸正人)

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