アジアと欧州、米抜き協力で成長持続探る
ASEM首脳会議が閉幕

2018/10/20 1:19
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【ブリュッセル=森本学】アジア・欧州の53カ国・機関が参加するアジア欧州会議(ASEM)首脳会議は19日、インフラ整備などを通じた「コネクティビティー(連結性)」の強化を目指す議長声明を採択して閉幕する。トランプ米政権が「米国第一主義」を掲げる中、アジア・欧州間の協力を深めて成長持続の道筋を探る狙いだ。アジアとの自由貿易協定(FTA)網の拡大など、欧州連合(EU)はアジア重視へのシフトを鮮明にしている。

18日から2日間の首脳会議の主要テーマのひとつとして議長を務めたEUが掲げたのが、アジア・欧州間のインフラ整備などを通じた「連結性」の強化。交通インフラの整備にとどまらず、効率的なエネルギー市場づくり、データや技術の相互移転などを念頭に置く。

EUはASEM首脳会議を前に、15日開いたEU加盟28カ国による外相理事会でアジア新戦略を採択。インフラ投資を通じて、連結性を強化する方針を打ち出した。

アジア開発銀行によると、今後数十年でアジアは年間1兆3000億ユーロ(約170兆円)を超すインフラ投資のマネーを必要とする。欧州投資銀行(EIB)などを通じて支援し、アジアの活力を低成長に悩む欧州へ取り込む一方、「法の支配」や「人権の尊重」など欧州の価値観を浸透させる狙いだ。

EUは新戦略で財政面や環境面での「持続可能」なインフラ投資なども打ち出した。世界のインフラ整備を巡っては、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」が巨額マネーの提供者として存在感を強めている。ただアジア諸国などでの中国による投資攻勢が、返済能力を超えた対中過剰債務を生んでいるとの批判も出ている。

「持続可能」という言葉にはこうした中国の投資姿勢へのけん制がにじむ。日本からASEM首脳会議へ出席した安倍晋三首相も19日、「質の高いインフラ整備」を後押しする考えを表明した。日本とEUが連携し、中国に対抗する投資姿勢をアピールする狙いだ。

19日採択する議長声明でも「持続可能」な取り組みが「すべてのASEM参加国の共通利益」だと明記し、「市場原理や合意された国際的なルール、規範、基準を守る」ことが必要だと訴える見通しだ。

EUがアジア重視を鮮明にしている背景のひとつが、トランプ米政権との溝の深まり。通商政策にとどまらず、イラン核合意からの離脱など安全保障面でも距離が開きつつある。対照的にアジアを巡っては、インフラ整備の新戦略に加え、FTA網の拡大も加速する。日本とは来春にも経済連携協定(EPA)を発効させる。ASEM首脳会議に併せて19日にはシンガポールとFTAに署名。ベトナムとのFTAも17日、署名・批准に向けた手続きに入った。

ただ中国の一帯一路への姿勢を巡っては欧州内でも足並みの乱れがある。中国の17年の対EU投資は約300億ユーロ(約3.9兆円)。中東欧やギリシャなどでは中国からの投資への期待も熱い。

中国マネーの力の前に、EUが掲げる価値観が揺らぐ事態も出てきた。ハンガリーとギリシャは、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年、南シナ海における中国の領有権主張を退ける判決を示した際、EUとして支持表明するのを拒絶。「国際ルールの順守」を重視してきたEUの面目をつぶす格好となった。

ASEM首脳会議の議長声明では自由で公正なルールに基づく多国間貿易体制の支持や、世界貿易機関(WTO)改革の加速なども表明する。北朝鮮を巡ってはすべての核兵器や関連施設の「完全かつ検証可能で不可逆的な解体」を盛り込む方針だ。

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