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「都立大」に戻る首都大学東京、島田晴雄氏が挑む改革

公立大学法人首都大学東京の島田晴雄理事長に聞く

公立大学法人首都大学東京の島田晴雄理事長

東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年、首都大学東京(東京都八王子市)は「東京都立大学」の名称に「復帰」する。知名度の低さに不満を抱える学生や卒業生からは、好意的な反応が多い様子だが、名称変更は大学が乗り出した改革の一端にすぎない。財政規模日本一の東京都をバックに持つ首都大は、どこをめざすのか。公立大学法人首都大学東京の島田晴雄理事長に聞いた。

「昔の名前」と言わないで

「いろいろな人からよく『昔の名前に戻るんですね』と言われるが、そういう見方をされては困るんです。それだったら変えない方がいい。たまたま同じ名前だが、戻るのではなく、新しい名前に生まれ変わる。同時に新たな歴史が動き出す。私はそう考えています」。都庁近くの高層ビルにある大学法人のオフィスで、島田氏は一気にまくしたてた。

大学の名称については、17年4月に島田氏が理事長に就任する前から、学生を中心に「変えてほしい」という強い要望が出ていたという。都が、旧都立大など4つの大学・短期大学を統合し、首都大を開校したのは05年。それから10年以上たつが、「~大学」で終わらない名前のわかりにくさや知名度の低さに関係者の不満は募っていたようだ。そうした声は東京都の小池百合子知事の耳にも届いており、都政与党の都民ファーストの会が、17年の都議選で首都大の「名称の再検討」を公約に掲げていた。

島田氏の理事長就任以降、大学改革も動き始めている。18年4月には看板学部だった「都市教養学部」を解体。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部の4学部を新設する初の学部・学科大再編に踏み切った。都市教養学部は、教育・研究の内容や育成する人材像がわかりにくいとの指摘があり、数年前から検討を重ねていたという。専門領域を明確にし、優秀な学生や教授陣の獲得を狙う。

7月には英国の名門ロンドン大学シティ校と学術・研究分野で連携協定を結んだ。今後、首都大の経済経営学部・経営学研究科とシティ校のビジネススクールの間で、研究者の交流などを進める計画だ。また、大学法人首都大が運営する産業技術大学院大学にも「東京都立」の冠をつけ、知名度アップをめざす。

慶応義塾大学で長年教授を務め、千葉商科大学では学長を経験した島田氏は、首都大を「学生も先生も職員も、みんな非常に真面目で優秀な人たちばかり」と高く評価する。実際、日本経済新聞などが18年に発表した大学の「研究の質」ランキングでは、首都大が東京大学や京都大学などを抑え、国内首位になった。研究の質は、学術論文の引用数に基づいており、若手教員が研究に専念できる場が整っていることが背景にあるという。日本の大学が財政的に厳しい状況に置かれるなか、後ろに都が控える首都大は「非常に恵まれている」(島田氏)。それが質の高い研究につながっている面もあるようだ。

島田氏は「学生も先生も職員も非常に真面目で優秀」と話す

ただ、民間出身の島田氏は物足りなさも感じている様子だ。「全体的におっとりしており、競争意識にやや欠ける。自己PRも不得手で、それが知名度の低さの一因でもある。自分たちのポテンシャルをフルに発揮しておらず、非常にもったいない」と指摘する。名称変更や海外のトップ大学との提携には、学生や教職員の大学への帰属意識や母校愛を高め、ひいては競争意識や自己主張の向上につながるとの期待もありそうだ。

キーワードは「G.O.S.」

島田氏は、小池知事から理事長に任命された際、「『G.O.S.をぜひやってください』と言われた」と明かす。

Gはグローバル化、Oはオンリーワン、Sはシニアを指す。特にシニアについては、都民の定年後の再就職や社会貢献活動に役立ち、生涯学び続けられる教育機関をつくってほしいとの要望があったという。

そこで首都大が19年4月に始めるのが「TMUプレミアム・カレッジ」(TMUは首都大の英語名の頭文字)だ。入学資格は50歳以上で、メインキャンパスである八王子市の南大沢キャンパスに1年間通い、ゼミ形式の授業などを受ける。初年度の募集人数は50人程度で、10月に募集も始めた。島田氏は「カルチャースクールではない、もっと本格的なカリキュラムになる」と話す。

オンリーワンに関して、島田氏は「ロボット分野や宇宙分野で世界をリードできるような最先端技術の一大研究拠点をぜひつくりたい」と力を込める。拠点ができれば、優秀な人材が世界中から集まり、大学の知名度や評価の向上につながる。都の支出次第では、それほど遠い未来の話でもなくなるだろう。島田氏は「できるだけ早い時期に実現できれば」と語る。

パッションあふれる大学に

「大学にもパッションが必要」

「タレントエコノミスト」の先駆け的存在として知名度抜群の島田氏は、それを大学の認知度アップにも利用していく構えだ。大学のホームページに自身の動画を定期的に公開し、大学の取り組みやキャンパスの雰囲気などを発信するのもそのひとつ。本格公開は19年4月からだが、すでに試作はできており、順次公開していく予定だ。日本語のほか、英語と中国語でも発信する。「大学のホームページの常識から外れたド派手なホームページになりますよ」と島田氏は熱を込める。

新生都立大は、どんな大学に変わるのか。その問いに島田氏は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)を率いたカリスマ経営者、ジャック・ウェルチ氏と対談したときのエピソードを持ちだし、こう答えた。

「ジャックに経営の要諦を質問したら、彼は『プロフェッサー島田、経営に一番重要なのは一にパッション(情熱)、二にパッション、そして三にパッションだ』と声を張り上げた。大学も企業経営と同じ。パッションを持って教育や研究に当たれば、結果や数字は自ずとついてくるし、学生自身もパッションを抱くようになる。新生都立大学はパッションあふれる大学にしたい。そう考えています」

少子化の進展で大学は淘汰の時代を迎え、生き残りをかけた競争は激しくなる一方だ。そのなかで新生都立大のパッションは、どんな花を咲かせるのだろうか。

(ライター 猪瀬聖)

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