進化するマネーボール

フォローする

投手より野手? ドラフト戦略がチームを決める
野球データアナリスト 岡田友輔

(2/2ページ)
2018/10/21 6:30
保存
共有
印刷
その他

年度ごとの相関係数(0~1の範囲で1になると完全に一致)をみると、打者の長打力や本塁打を打つ力を示す指標は0.8前後。つまり、こうした能力はシーズンをまたいでも安定して発揮される。対照的に投手では最も再現性が高い三振奪取能力でも0.6。防御率や勝率に至っては0.2~0.3程度と変動が大きく、前年の成績は当てにならないのだ。

以前のコラムでも書いたように、ある打球がアウトになるか安打になるかは投手にはコントロールできない。当然、失点も投手の責任範囲には収まらない。さらに投手とは、フォームや指先の感覚が一度狂ってしまうと簡単には元に戻せないデリケートな生き物だ。期待の新人が鳴かず飛ばずで終わってしまうことが野手以上に多いのは、プロとアマのレベル差に加え、こうした事情も関係していると考えられる。

以前、ドラフト指名時の属性とその後の成績の関連性を調べてみたことがある。使った指標やデータがやや古いため細かい変動はあるかもしれないが、大まかな傾向を紹介しておこう。最もリスクが高いのは高校生の投手だ。松坂大輔(中日)、ダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)といった超高校級であれば高い確率で成功するが、全体では4人に1人が1軍登板さえできずに引退する。モノになれば大きいハイリスクハイリターンの投資対象だ。

当たると大きい高校生野手

反対に最もリスクが低いのは大学生。成功の基準をどこにおくかは様々な考え方があるだろうが、高校生や社会人に比べ最も戦力になる割合が高い。ローリスクハイリターンの優良な投資対象といえる。ポジション別で最も難しいのは捕手だ。一定の傾向が見当たらず、どこに当たりが入っているのか分からなかった。

リーグ3連覇を果たし、ファンに手を振る鈴木(左)と丸。広島のドラフト戦略の成功例だ=共同

リーグ3連覇を果たし、ファンに手を振る鈴木(左)と丸。広島のドラフト戦略の成功例だ=共同

いうまでもなく、投手も野手も1位指名選手の成功率は総じて高い。抽選になるような選手であればなおさらだ。これは裏返せば、球界の勢力図には2位以下の選手の成功が大きな影響を与えることを意味する。ときに"大当たり"が入っているのが2位以下の高校生野手だ。進学すれば4年後には1位候補という素材を青田買いして自前で育てられればチーム力は大きく上がる。西武の浅村栄斗(3位)、広島の丸佳浩(高校生3位)、鈴木誠也(2位)、ソフトバンクの中村晃(高校生3位)、上林誠知(4位)、日本ハムの西川遥輝(2位)らはそういう存在だ。

V9時代の巨人や黄金期の西武から現在の広島に至るまで長期にわたって強いチームは例外なく野手の顔ぶれが充実している。ドラフトでは「即戦力投手」に人気が集まりがちだが、カブスのチームづくりは5カ年計画だったことを忘れないでほしい。行き当たりばったりではなく、「いつ勝つか」を明確にすることが強いチームづくりの第一歩といえるだろう。

 岡田友輔(おかだ・ゆうすけ) 千葉県出身。大学卒業後、民放野球中継のデータスタッフやスポーツデータ配信会社勤務を経て2011年に独立。株式会社DELTAを立ち上げ、野球のデータ分析やプロ球団へのコンサルティングなどを手がける。著作に「デルタ・ベースボール・リポート1」など。

進化するマネーボールをMyニュースでまとめ読み
フォローする

  • 前へ
  • 1
  • 2
保存
共有
印刷
その他

プロ野球コラム

17年ドラフト会議

電子版トップスポーツトップ

進化するマネーボール 一覧

フォローする
ホワイトソックス戦に先発し、7回無失点で8勝目を挙げたカブスのダルビッシュ(シカゴ)=共同共同

 米大リーグ、カブスのダルビッシュ有が投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞候補に挙がる活躍を見せている。賞の行方はライバルを含めた残りの登板に懸かってくるが、受賞となれば日本人選手初の快挙だ。低迷してい …続き (9/25)

九回、満塁から逆転サヨナラ2点打を打たれた日本ハム・堀。土壇場では一球が明暗を分ける(27日)=共同共同


 1点差の九回2死満塁では一つのストライク、一つのアウトが明暗を分ける。手に汗握り、しびれ、固唾をのんで見守るヤマ場は野球観戦の醍醐味だ。では、一発出れば逆転サヨナラという3点差の九回2死満塁と、勝利 …続き (8/30)

22日のヤクルト戦の九回、1死満塁のピンチを招いた山崎に声を掛けるDeNAのラミレス監督(80)=共同共同


 4分の1を過ぎたプロ野球ペナントレースでリリーフ投手の不調が目立っている。勝ちパターンに持ち込んだチームの投手リレーが崩れ、逆転負けするケースが相次いでいる。26日にはDeNAが八回以降、広島に6点 …続き (7/30)

ハイライト・スポーツ

[PR]