2019年4月19日(金)

ビースポークのチャットボット、訪日客の旅の友

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
2018/10/19 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

訪日観光客が増加するなか、ビースポーク(東京・渋谷)のチャットボット(自動応答システム)がホテルや空港、駅などで活躍している。スタッフに代わって案内業務の一部を担い、人手不足の現場を助ける。綱川明美社長(31)が目指すのは、訪日外国人観光客の心をつかむコミュニケーション。温かい人工知能(AI)だ。

綱川明美社長

綱川明美社長

日本の玄関口、成田国際空港。Wi-Fiに接続すると、ビースポークのチャットボット「ビーボット」が立ち上がる。旅行者が「空港内の両替所の場所」「新宿までの交通手段」といった問いかけをチャットにすると、AIが答えを返す。

日本政府観光局(JNTO)によると、2017年の訪日外客数は16年比2割増の2869万人と1964年に統計を始めてから過去最高となった。様々な国からの旅行者が増えるなかで、旅行者を受け入れるホテルや公共施設の仕事量も増加の一方だ。

館内サービスに関する問い合わせや飲食店の予約などはチャットボットが担う。「スタッフには人にしかできないことに専念してほしい」と綱川社長。「また日本に来たい、このホテルに泊まりたいと思ってもらえるのがビーボットの目的」だという。

ビーボットはJR東京駅やニュー・オータニ、ホリデイ・インなどでも導入されている。英語と中国語で対応し、旅行者はWi-Fi接続やQRコードを読み取るだけで利用できる。17年春に提供を始めてから導入企業の解約はゼロといい、ホテルや公共施設にとって頼れる味方だ。

お薦めの飲食店を紹介したり、予約したりできる

お薦めの飲食店を紹介したり、予約したりできる

UI、UXなど使いやすさやサービスを使う顧客のことを考えて開発している。返信率や返信までの時間を計測して、楽しんで会話をしてもらうための回答を決めている。返事はダラダラと書かず、簡潔に3行程度。反射的に答えず、あえて「どこがいいか考えています」といったん出すなど、機械感を消して温かみのある自然なコミュニケーションを再現しようとしている。

約20人いる従業員のうち日本人は3人。フランスやポーランドなど「海外出身の社員が訪日客の目線で作り込んでいる」(綱川社長)。今では1日3万5千人が利用しており、単純計算で年間1300万人近くが使うインフラに育った。

「ビーガン(完全菜食主義者)向けの飲食店は」といった利用者からの問いかけが施設側にとってはサービスの改良につながる。地震や豪雨災害が頻発するなか、9月から災害情報の提供も始めた。「コンビニで傘を買えるとか、日本に住む人にとっては当たり前の情報でも、救われる人がいる」

綱川社長がビースポークを設立したのは2015年のこと。趣味の一人旅から帰国し、妹に感想を話していた。「路地裏のギャラリーとかを地元の人しか知らないことを教えてもらえればもっと楽しめるのに。そんなサービスがあればいいよね」。話しながら気付いた。「ないなら自分でつくればいいじゃん」

フットワークは軽い。高校時代、進学先を決める際「どうせなら米国の大学に行ってみたい」。現地に行ったこともなければ、英語も話せなかったが、母親に放り込まれた。語学ができない中の初めての一人暮らし。料金を払えず、電気が止まった。それでも猛勉強して、カリフォルニア大学ロサンゼルス校を卒業。何とかなったのが自信となった。

帰国後には、新卒で社員を募集していない会社に押しかけてインターンとして入社。猛烈な仕事ぶりが認められ、採用された。

起業の際も、仕事を辞めることに迷いはなかった。「ダメ会社員だったし、毎週同じことの繰り返しで、そのままいても自分の戦闘能力が上がる気がしなくて」。金融業界にいたことがあり資金調達には自信もあった。あとはともに闘う仲間づくりだと、フェイスブックで数百人いた友達に片っ端から「知り合いでいい人を教えて!」とメッセージを送り、エンジニアらを採用した。

フットワークの軽さは健在だ。海外のカンファレンスに頻繁に出向く。そうして広がった人脈を生かし、欧州で著名なロボット開発スタートアップらとの提携もまとめた。近く、シンガポールでも本格的にサービスを始める予定だ。「ハプニング続きだけれど当初計画よりもうまくいっている。一方で、もっと伸びることが分かっているからもどかしい」

息抜きはフィットネスクラブでの運動だが、トレーニング中も会社のことを考えている。世界中のスタートアップが開発競争を繰り広げるチャットボット業界のトップランナーをめざし、全速力で走っている。  (若杉朋子)

[日経産業新聞 2018年10月19日付]

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