カニ素材で保湿2倍に AGCグループが化粧品参入

2018/10/18 17:32
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AGC(旧旭硝子)グループは18日、化粧品事業に参入すると発表した。AGC子会社の北海道曹達(北海道苫小牧市)を通じて、洗顔せっけんや化粧水の発売を23日に始める。すべてズワイガニから取り出した成分「キチンキトサン」を含むのが特徴。同社は多角化する事業分野を反映し、7月に社名から「硝子(ガラス)」の文字を消した。社名変更から初めての異業種参入となる。

商品名は「DA CAPO(ダ・カーポ)」シリーズ。東京・京橋にあるAGCの展示スペースで同日に記者会見した北海道曹達の沖中端見専務取締役は「『キトサン』を活用している。ズワイガニからとれるものだ」と説明した。

化粧水などで使われるヒアルロン酸に比べ、キトサンエキスの保湿性は約2倍という。肌に敏感な消費者が敬遠するエタノールや着色料なども使っていない。まずせっけんや化粧水、乳液、美容液の4商品をそろえた。価格は税別で1500~3500円。ダ・カーポの専用ウェブサイトを通じてネット販売するほか、北海道内の東急ハンズでも取り扱う。購入層は30~40代の敏感肌の女性を想定している。

北海道曹達の企画・管理本部の北沢由梨亜主査は「当面の売り上げ目標は年間数千万円だ」と話す。市場の反応を見て、他の全国チェーン店での販路拡大を検討する。

同社は1949年に事業を始めた化学メーカーで、2012年にAGCが株式の過半数を獲得した。食用カニの殻の処理法として、カニ殻から有効成分を取り出す技術を開発した。08年にこの技術を応用した化粧品を単独で販売したが、伸び悩んでいた。

AGCは社名変更を機に、独自技術を生かして新たな付加価値を生み出す多角化戦略の推進を成長戦略に据える。北海道曹達もグループの新戦略に歩調を合わせ、独自技術を使った化粧品の新ブランドを立ち上げた。

化粧品業界には、これまでも異業種が参入している。富士フイルムは06年に写真フィルムの製造技術や素材を活用した化粧品事業に参入した。07年に主力ブランド「アスタリフト」を立ち上げ、参入4年目に売上100億円に達した。アスタリフトはスキンケアからベースメークなどに領域を広げ、ラインアップは9月末で39製品に拡大している。

味の素も調味料として研究開発してきたアミノ酸を生かすスキンケアブランドを1997年に立ち上げた。製薬企業のロート製薬や大塚製薬なども、主力事業の技術を転用して市場に参入してきた。

化粧品分野に挑戦するAGCグループの課題は消費者からの知名度の低さだ。AGCは企業向けビジネスが主体。社名変更に合わせて俳優の高橋一生さんが出演するテレビCMを始め、CMに「化粧品」という言葉も盛り込んだ。AGCの広報担当者は「CMのタイミングに今回の発表を合わせた」と話す。

同グループは消費者の手に直接届く製品の経験が少ない。化粧品事業への参入にあわせて、11月から電話の問い合わせ窓口の人員を増やす計画だ。

先行する富士フイルムは2021年3月期に化粧品・サプリメントなどで500億円の売り上げを目指す。10年以上の時間をかけて商品や販路を育んできた。当初は通販が主体だったが、現在はドラッグストアや総合スーパーなど全国の約8000店で販売している。

化粧品業界では「1ブランドあたりの売上高で100億円」が消費者にブランドとして認められる下限とされる。AGCグループも息の長い取り組みが必要だ。ただし投資に対するリターンへの株主の視線は厳しい。できるだけ早い段階で目に見える実績を残すことも求められている。

(矢野摂士)

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