2019年7月20日(土)

「アマゾン・ゴー」に続け、米中で無人店が続々誕生

CBインサイツ
コラム(テクノロジー)
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2018/10/22 2:00
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 米老舗百貨店シアーズの経営破綻であらためてクローズアップされているのが、流通業界を取り巻く「アマゾン・エフェクト(効果)」だ。だが、アマゾンの近ごろの動きからむしろ浮かび上がってくるのがリアル店舗の価値だ。米アマゾン・ドット・コムは高級スーパーのホールフーズを買収したほか、無人コンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」で話題を呼んだ。無人店の発想は昔からあった。なぜ今、また無人なのか。背景にはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」のテクノロジーの進歩がある。そこに目を付けるのはアマゾンだけではない。

ネット通販やスマートフォン(スマホ)の台頭にもかかわらず、買い物ではなお実店舗も重要な役割を担っている。店舗を持つ小売り各社は生き残りをかけてテクノロジーの導入を進めている。

こうしたなか、話題を独占している最新トレンドの一つが「レジなし」店舗だ。

米アマゾンは最近、レジなしコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」の4号店を開いた。アマゾン・ゴーはカメラやコンピュータービジョン、あらゆるモノがネットにつながるIoTを駆使して店内の客を追跡し、客が選んだ商品を自動で精算する。レジは不要だ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

ニュースに登場する無人店はアマゾン・ゴーばかりだが、他にも十数社がレジなし店舗を手掛けている。

そこで使われるテクノロジーは様々だが、共通点がある。「顧客のデータ収集」だ。

この記事では、レジなし店舗の主なアイデアとテクノロジーについて探り、こうした自動化技術を活用している企業を取り上げる。さらに、今後の見通しについて考える。

■レジなし店舗への転換が進んでいる理由

無人店舗は目新しい概念ではない。その存在は2000年以上前に遡ると指摘する歴史家もいる。古代ギリシャの文献には、寺院で聖水を施すコイン式機械について記されている。

その後、現代の自動販売機が発明され、レストランから食料品店や雑貨店に至る多くの店が、セルフ会計など様々な無人・セルフサービスのコンセプトを試してきた。

例えば、米ウォルマートは2013年にセルフ会計技術を試験導入した。客が買いたい商品のバーコードをアプリでスキャンすると、QRコードが生成される。これをセルフレジにかざして精算する仕組みだ。

16年には、米ファッションブランド「レベッカミンコフ」が米スタートアップ企業QueueHop(キューホップ)と連携し、RFID(無線自動識別)を使ったセルフレジを導入した。客はアプリを使って自分で商品をスキャンし、精算する。精算が済むと商品に付いていた盗難防止タグが自動的に外れる。

だが、どちらの実験も長期的な成功を収められず、普及もしなかった。ウォルマートはその後も見直しを繰り返しており、キューホップに至ってはもはや存続していない。

それでも、レジを簡素化して無駄なプロセスを省くというコンセプトはやはり小売り各社にとって最重要課題であり、多くのメリットをもたらす可能性がある。

無人店舗では、次のようなメリットが見込める。

・今までにない場所に販売店を置ける:ショッピングモールは苦戦を強いられ、実店舗も客足が鈍っている。各社は客が来店するのを待っているわけにはいかない。客の方に自ら出向く必要があるのだ。そこでレジなし売店が有用になる。こうした売店は省スペースで人手も要らず、オフィスのロビー、大学のキャンパス、乗り換え拠点などの公共スペースに設置できる。これは無人店舗の元祖である自動販売機の次世代版だ。

・人件費を削減する:自動精算を導入すれば、レジ係の必要性が減る。各社は余った人員を削減したり、接客などの現場に配置転換したりできる。もちろん先行投資はかさむ可能性がある。

・客のデータを収集する:オフラインの客にモバイル決済を促すことで、各社は客のオンラインとオフラインのIDを統合したいと考えている。そうすれば客の興味や習慣の全体像をつかめるからだ。多くの無人店舗は店内の客を絶えず追跡するため、陳列棚のディスプレーや店のレイアウトなどに対する客の反応も理解しやすくなる。

・在庫管理を効率化する:客のオンラインとオフラインの行動の全体像が分かれば、店舗に応じて在庫に特色を出しやすくなる。あるエリアの客がオンラインで買う傾向が高い商品を把握し、これをそのエリアの店舗の販促に生かすことができる。店舗での購入履歴に基づいてオンラインでオススメ商品を紹介することも可能だ。

■レジなし店舗を支えるテクノロジー

各社は次のようなテクノロジーを駆使し、レジなし店舗や無人店舗を運営している。

・コンピュータービジョン:人工知能(AI)の応用分野の一つであるコンピュータービジョンによって、コンピューターは画像を理解できる。レジなし店舗ではこの技術を活用し、店内の客を追跡する。ただし、後述する顔認証を使わなければ客の特定はできないため、客は入店時にスマホでコードをスキャンし、自分の存在をIDにリンクさせなくてはならない。コンピュータービジョンは店内の商品の動きも追跡する。

・顔認証:顔認証のアルゴリズムは客の画像データをIDに結びつける。本格的な顔認証ツールを搭載しているカメラは、店内の客の画像をデジタルプロフィルと照合し、客の名前とIDを突き止めることが可能だ。米小売りの大半はまだ顔認証を使っていないが、中国では発展している。

・陳列棚のセンサー:一部の無人店舗や従来型の店舗では、重量センサーや光センサーを使って商品が棚に置かれたり、取り出されたりしたことを検知する。これはカメラが記録した行動を裏付け、客が商品を棚から取り出したり、棚に戻したりした証しにもなる。商品が売り切れると、店員に自動で注意喚起することも可能だ。

・バーコード:客自身に商品のバーコードをスキャンし、精算させるアプリは、無人精算を支える。

・QRコード:無人店舗のアプリの多くはQRコードを活用している。特に中国では、モバイルアプリが客専用のQRコードを生成し、客はこれをスキャンして入退店したり精算したりする。商品にQRコードが付いており、客がこれをスキャンして商品の詳しい情報を得られるモデルもある。

・RFIDタグ:RFIDタグは商品に取り付けられ、店内の商品を追跡する。店の出口にあるセンサーでRFIDの情報を読み取り、客が持ち出そうとしている商品をチェックできる。低価格の商品にRFIDタグを付けるのは割に合わないことが多いため、アマゾン・ゴーなどはタグを使わず、AI観測システムで商品を追跡している。一方、高価格商品を扱う無人店舗では、セキュリティー強化の手段にもなる。

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