2018年11月18日(日)

英EU離脱、年内交渉合意へ2つのハードル

Brexit
ヨーロッパ
2018/10/18 10:07
保存
共有
印刷
その他

【ブリュッセル=森本学、中島裕介】英国の欧州連合(EU)離脱は市民生活や企業活動に混乱をもたらす「合意なし」離脱を回避できるのか。「決定的瞬間になる」とEUが位置づけてきた10月の首脳会議が17日、ブリュッセルのEU本部で開かれた。しかし行き詰まった離脱交渉の打開策は描けなかった。英・EUは新たにクリスマスまでの合意を「最終期限」としているが、実現には2つのハードルが待ち受ける。

トゥスクEU大統領(右)に英離脱交渉の状況を報告するバルニエ首席交渉官(左)(ブリュッセル、16日)=ロイター

トゥスクEU大統領(右)に英離脱交渉の状況を報告するバルニエ首席交渉官(左)(ブリュッセル、16日)=ロイター

「メイ英首相から新しい内容の説明はなかった」(欧州議会のタヤーニ議長)。17日のEU首脳会議でEU側は英側の交渉打開につながる提案を求めていたが、空振りに終わった。

2019年3月の英国の離脱まで残り半年弱。英国とEUの離脱交渉は暗礁に乗りあげている。年内合意の実現は容易ではない。乗り越えなければならない1番目のハードルがアイルランド国境問題だ。

島国の英国にとってEU離脱後に唯一、地続きでEUと国境で接するのが英領北アイルランドとEU加盟国のアイルランド。かつて宗派対立による激しい北アイルランド紛争の舞台となった国境地帯はEUの下で経済・社会の一体化が進み、今では毎日3万人が国境を意識せずに往来する。

英国のEU離脱で分断されれば再び不安定になるおそれがあるため、英・EUは厳しい国境管理を避ける基本方針で合意。英国は具体的な解決策を示すと約束したが、妙案は見つかっていない。

EUは英国がEU関税同盟から完全離脱する20年末までに解決策を見つけられなければ、北アイルランドのみを関税同盟に残す案を提案。一方、「英国の分断」につながると反発した英国は21年末までの期限付きで、英国全体を関税同盟に残す対案を示した。

しかしEU側は英提案が21年末以降の国境管理の復活を避ける「安全策」を欠いていると批判。英提案を受け入れるとしても、さらなる安全策としてEU提案の北アイルランドのみを関税同盟に残す案が必要だとの立場を崩さず、溝が埋まっていない。

年内交渉への2つ目のハードルが、離脱後の英・EUの通商協定だ。英・EUは大枠を定めた「政治宣言」での合意をめざしている。

しかし自由貿易協定(FTA)の締結を軸に据えるEU側と、FTAよりも深い関係を築いて「摩擦のない貿易」(メイ英首相)を実現すると主張するメイ政権の主張がなお食い違ったままだ。

メイ政権は7月、「モノの自由貿易圏」を柱とする離脱後のEUとの通商構想を示したが、移民を制限しつつ、税関手続きを避けようとする姿勢にEU側は「いいとこ取り」と反発。EU首脳はメイ提案を「機能しない」と退けた。メイ提案には英国内でも強硬離脱派から「EU側に譲歩しすぎだ」との反発が強い。英議会はあいまい決着は許さないとの姿勢で、交渉打開を難しくしている。

さらに交渉の行方を不透明にしているのが、英議会での交渉合意案の否決リスクだ。メイ政権は10議席の北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)との閣外協力で辛うじて過半数を保っている。与党・保守党も含め造反がでれば、英・EUの合意が水の泡になる恐れもある。

もし与党内の造反で英・EUの妥結案が英議会で否決された場合、英側から再交渉や離脱期限の延長を申し入れることはできるが、EUの承認が必要になる。

フランス政府が17日に「合意なし離脱」に備えた計画を発表するなど、EU各国は既に「合意」と「合意なし」の両にらみで動いており、英の要望が受け入れられるとは限らない。「合意なし」の無秩序な離脱のリスクは時間の経過とともに高まっている。

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報