2018年11月15日(木)

米中貿易戦争、「国際郵便」にも飛び火

トランプ政権
貿易摩擦
中国・台湾
北米
2018/10/18 8:59
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【ワシントン=鳳山太成】米中の貿易戦争が国際郵便にも飛び火した。トランプ米政権は17日、国連専門機関の万国郵便連合(UPU)からの離脱手続きを始めると発表した。同連合が定めた郵便料金制度により、中国が割安な料金で輸出を伸ばす一方、米国の消費者や企業が高い料金で損失を被っているとの不満が背景にある。あらゆる武器を総動員して中国への圧力を強めるトランプ政権の姿勢が鮮明だ。

「米国の製造業や労働者は巨額のコストを払わされており、中国と公平な土壌で競争できない」。米政府高官は17日の電話記者会見でUPUの現行制度への不満をぶちまけた。中国だけが制度を悪用しているわけではないと断りつつも「サンフランシスコからニューヨークに送るより、北京から送った方が安い」「中国から偽造品や違法薬物が流れ込んでいる」などと問題点を並べ立てた。

米国が抱える不満の根源はUPUが定める国際郵便の料金制度だ。郵便事業者が郵便物の重さや量に応じて相手国の事業者に支払う「到着料」が発展途上国については割安に設定されている。特に軽量の小包は格差が大きい。中国が世界2位の経済大国となるなか、米国は現行制度を不公正だとみる。

例えば米郵政公社は中国から送られてきた郵便物を高いコストで国内配達するが、中国側から受け取る到着料は割安だ。米政府は損失を埋めるため米国内で高い郵便料金を設けざるを得ないと説明する。米国が負うコストは年3億ドル(約338億円)に上るという。一方、中国では国際便でも配達無料をうたうネット通販業者が存在する。

今回の動きは政権内きっての対中強硬派であるナバロ大統領補佐官が主導した。全米製造業協会は17日、「中国との取引がより一段と公平になれば、米国の製造業者や労働者は大きな恩恵を受けるだろう」と政権を支持する声明を発表した。

トランプ大統領は8月に出した大統領令で制度見直しを関係省庁に指示。9月のUPUの国際会議で問題提起したにも関わらず受け入れられなかったため離脱を決めた。実際には1年間の猶予期間があり、加盟国との交渉次第では離脱撤回もあり得るとしている。

一方で米政府は最低半年かけて国際ルールに縛られない新たな料金制度を検討する。全米商工会議所は「配達コストに見合った公正な制度を各国と2国間で交渉して決めるべきだ」と提言する。

郵便行政に関わる日本政府関係者は「前例に乏しく、実際に米国が関わる国際郵便の取り決めや料金にどう影響するか現時点では読みにくい」と話す。料金制度が変われば米国や中国と取引する日本の会社や個人にも影響する可能性がある。

これまでもトランプ氏は米国にとって不公正との理由で環太平洋経済連携協定(TPP)や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明したほか、世界貿易機関(WTO)からの脱退もほのめかしてきた。UPUは日本でいえば明治7年にあたる1874年に設立された歴史のある国際機関だ。今回の動きは多国間主義から距離を置くトランプ氏の姿勢も象徴している。

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