2019年6月27日(木)

離島奪還、緊迫の銃撃戦 陸自・米海兵隊共同訓練ルポ

2018/10/19 11:30
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陸上自衛隊は5~19日の日程で、鹿児島・種子島や周辺海域で米海兵隊との実動演習を実施した。今春、長崎県佐世保市に新設された陸自の「水陸機動団」が中心となった日米共同訓練で、国内での実施は初めて。「敵に占拠された離島の奪還」を想定、一部は地域住民や報道陣に公開され、緊迫した作戦が展開された。

種子島中部の長浜北海岸、午前5時半。日の出前の闇の中、7人の偵察部隊が波の中から静かに姿を現した。沖合でボートから海中に入り、泳いで上陸。海岸付近の状況を注意深く探り、敵がいないことを確認すると、数キロ先の沖合にうっすらと艦影を見せる海自輸送艦「おおすみ」に合図を送った。

■レンジャー部隊がボートで上陸

空が白み始めた午前6時すぎ、6~8人乗りのボートが次々と姿を見せた。陸自水陸機動団の「レンジャー部隊」と呼ばれる隊員だ。息の合った最小限のやりとりで、ボートを海岸に隠す。約1時間後には数キロ先まで射程に入る迫撃砲も海岸に設置。島内に前進する態勢が整った。

ボートで上陸する陸上自衛隊の水陸機動団(14日、鹿児島県中種子町)

ボートで上陸する陸上自衛隊の水陸機動団(14日、鹿児島県中種子町)

目指すのは海岸から約3キロの旧種子島空港(鹿児島県中種子町)。「離島奪還は、まず敵の空路を断つのが優先」(陸自関係者)だ。同空港には敵が潜んでいる施設に見立てたテントが2カ所に設けられた。

顔に迷彩の塗料を塗ったレンジャー部隊が前進していく。奪還作戦の中核を担うヘリ部隊が上陸できるよう、空港周辺の安全を維持するのが任務だ。午前8時半すぎには滑走路の北西部をヘリ降下地点として確保した。

午前9時ごろ、陸自の輸送ヘリCH-47が地上に降り立った。ヘリから飛び出してきたのは米海兵隊員約10人。滑走路の両脇にある草むらに身を潜め、静かに前進を始めた。敵味方双方にとって見晴らしのいい滑走路は全長1.5キロ。海兵隊は中間地点に1つ目の攻撃目標を見つけると、いったんその場に待機した。

陸上自衛隊のヘリコプターから展開する米海兵隊(14日、鹿児島県中種子町)

陸上自衛隊のヘリコプターから展開する米海兵隊(14日、鹿児島県中種子町)

■突然幕を開ける銃撃戦

15分後、再びヘリが到着し、運ばれてきた陸自隊員約20人が海兵隊に合流した。海兵隊が後方で支援態勢をとり、陸自部隊がじわじわと目標に近づいたところ、突然、テントから敵役の兵士2人が飛び出した。

「前!前!」「ライン停止!!」。いきなり始まった銃撃戦。隊員らは敵を取り囲んで制圧し、テントに突入した。

訓練では実弾や空砲は使わず、銃撃音は笛で代用された。それでも辺りには緊迫した空気がみなぎり、見学していた住民からは「すごい迫力」「本当に撃ち合いをしているみたいだ」と驚く声が上がった。

テント内の無線機を破壊した隊員らはさらに歩を進め、ヘリは装備品や高機動車と呼ばれる大型トラックも次々と運搬。滑走路の半分を制圧するとヘリが降下できる空域も広がり、前線の隊員を支援する態勢が整えられていく。

敵施設に見立てたテントを攻撃する陸上自衛隊の水陸機動団(14日、鹿児島県中種子町)

敵施設に見立てたテントを攻撃する陸上自衛隊の水陸機動団(14日、鹿児島県中種子町)

午前10時前、再び激しい銃撃戦を経て、敵の拠点を破壊、空港を確保した。訓練はこの段階で終了した。

もっとも「これは序の口。実際にはこの後に島全体を制圧するための態勢を整えなければならない」(水陸機動団隊員)。仮に"実戦"となれば、奪還作戦はさらに続くことになる。

■「本当の有事のよう」住民に懸念も

水陸機動団は南西諸島を機動的に防衛する目的で創設され「日本版海兵隊」ともいわれる。約2100人の隊員が実戦を想定した訓練を重ねているが、住民からは懸念の声も上がる。

家族4人で見学していた30代女性は「自衛隊がいい悪いということではないが、有事が迫っているのかなと不安になった」と話す。訓練公開日前日の13日、空港近くで開かれた抗議集会に参加した農業の60代女性は「十分な説明がなかった。訓練の恒常化に危機感がある」と訴えた。

海上保安庁によると、昨年、沖縄・尖閣諸島周辺の接続水域内で中国海警局の船が確認されたのは171日にのぼり、領海侵入も29日あった。陸自関係者は「何があっても対応できるように備えるのが職務。住民の方々には丁寧に説明し、安全を確保しながら訓練を重ねたい」と語った。(秦明日香、写真・映像は塩山賢)

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