2019年3月26日(火)

豪、エルサレム首都認定検討 補選狙いに強まる反発

2018/10/16 18:40
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【シドニー=松本史】オーストラリアのモリソン首相は16日、エルサレムをイスラエルの首都と認定することを検討すると表明した。突然の発表の背景には、豪国内で近く実施される補欠選挙がある。与党にとって下院での過半維持がかかる戦いで、選挙区に多いユダヤ系住民らの票集めとの見方は強い。一方、アラブ諸国からの反発は必至で、政権運営の打撃となるリスクもはらむ。

「豪政府は、元駐イスラエル大使デーブ・シャルマ氏が提案した議論を慎重に検討する」。16日、モリソン氏がペイン外相と発表した共同声明にはこんな文言が記された。「議論」とはエルサレムをイスラエルの首都と認定すべきだとの主張だ。加えて、テルアビブにある豪大使館の西イスラエルへの移転検討も記された。

豪最大野党・労働党は同日、モリソン氏が「何とかして補選に勝とうとしている」と強く批判した。

豪州では20日、ターンブル前首相の辞職に伴う補選が実施される。声明に名前が記されたシャルマ氏は与党・自由党の候補者だ。選挙区はシドニー東部の高級住宅地で住民の1割超がユダヤ系とされる。定数150の下院で、与党・保守連合(自由党と国民党)はターンブル氏の辞職により現在75議席。補選で敗北すれば議会での優位を失う。8月に就任したモリソン氏にとっては初の連邦議会選挙でもあり負けられない戦いだ。

オーストラリア国立大学のアミン・サイカル教授は「シャルマ氏が予想以上に苦戦しており、モリソン氏はかねての構想を発表するタイミングとみた」と指摘する。また5月にエルサレムに大使館を移転した米国に追随することで「同盟重視を示し、トランプ米政権に秋波を送る意図がある」(関係者)との見方も出る。

モリソン氏の突然の表明は国内外で反発が強まっている。ロイター通信によると、アラブ諸国の駐豪大使らはモリソン氏の声明を受け、16日キャンベラで会談した。エジプトのモハンマド・ハイラート大使はモリソン政権がエルサレムを首都と認定すれば「アラブ諸国だけでなく、他のイスラム教国との間にも敵対的な関係をもたらしかねない」と話した。公共放送ABCは、イスラム教徒の人口が世界最大のインドネシアが豪州と交渉中の包括的経済連携協定(CEPA)の一時中断も検討すると伝えた。

豪国内のパレスチナ支援団体は「選挙区内の一握りの票のために、中東にいる数百万人の未来を危険にさらす無責任な政策だ」と批判する。

ただ、実際にモリソン政権がエルサレムに大使館を移転するかは未知数だ。豪州で2019年5月までにある総選挙では、支持率が低迷する保守連合は苦戦が予想される。「欧州を中心に国際社会からの失望は強い」(サイカル氏)とみられる上、豪国内でも移民やリベラル層を中心に反発は避けられない。20日の補選後、強硬に手続きを進めても無策に終わっても、モリソン政権のさらなる支持率低下につながる可能性は大きい。

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