米、サウジと同盟維持に腐心 記者殺害疑惑で

2018/10/16 13:44
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【ワシントン=中村亮】ポンペオ米国務長官は16日、サウジアラビアの首都リヤドを訪問し、サルマン国王と会談する見通しだ。サウジに批判的な著名記者が殺害された疑惑について協議する。トランプ政権はサウジとの連携を軸にイラン包囲網の構築やテロ対策を進めてきた。サウジに強硬策を求める米議会に配慮して厳しい措置を辞さない構えを見せつつ、ポンペオ氏の早期訪問には同盟関係の揺らぎを最小限にとどめたい意図も透ける。

15日、トランプ米大統領はサウジ人記者の殺害疑惑を巡って事態の収拾に動き出した(ジョージア州)=AP

複数の米メディアは15日、サウジ政府がトルコのサウジ総領事館内で著名記者ジャマル・カショギ氏が殺害されたと認める検討をしていると報じた。サウジはカショギ氏が館内で殺害されたことなく総領事館を去ったと説明した経緯があり、事実関係の認識を大きく変えることになる。

トランプ氏は15日、訪問先のジョージア州で記者団にカショギ氏が殺害された疑惑について「ひどい状況だ」と改めて懸念を示した。これに先立ちサルマン国王と疑惑をめぐって電話協議し、ポンペオ氏にはサウジ訪問を指示した。当初は「カショギ氏は米国民ではない」「トルコで起きたことだ」などと突き放していたが、一転して事態の収拾に動き出した。

背景には世界中にサウジへの反発が広がり、中東政策の要のサウジと同盟関係を維持するのが難しくなりかねないとの判断がある。

米国務省は15日、ジェフリー・シリア特別代表が近くサウジを訪問すると発表した。シリア北西部での民間人の犠牲を防ぐためにアサド政権に軍事行動の自制を求める方針を確認する見込みだ。カショギ氏の殺害疑惑が広がる中での米政府高官のサウジ訪問は今後もシリア政策で協力を続ける意思表示ともいえる。

サウジとの関係悪化はイラン包囲網の乱れにつながる可能性もある。トランプ政権は11月5日に発動するイラン制裁に関連し、イラン産原油の禁輸を各国に求めている。一方、原油価格の高騰を避けるため、サウジには増産を求めている。対イランでの連携が難しくなれば制裁は原油高となって米国経済に跳ね返りかねない。

アラブ首長国連邦(UAE)やエジプト、ヨルダンなどアラブ諸国は、すでにカショギ氏の殺害疑惑をめぐってサウジ政府の立場を支持する考えを表明している。サウジとの関係が悪化すれば中東諸国が一斉にトランプ政権との政策協力に慎重になるリスクもある。

ただ、トランプ氏はサウジ強硬論を唱える議会への目配りも必要で、今までどおりの同盟関係を維持できるとは限らない。上院外交委員会は10日、人権侵害を犯した人物に制裁を科す法律に基づいてトランプ氏に疑惑の捜査を要請した。トランプ政権は来年2月までに実際に制裁を科すかどうかの判断を迫られる。

トランプ氏がこだわるサウジへの武器輸出も議会承認が必要だ。疑惑をめぐってはトランプ氏が率いる共和党からも「サウジ政府の関与が確認されれば、米・サウジ関係が崩壊する」(リンゼー・グラム上院議員)との声があがる。

2017年6月にはサウジへの軍事装備品の売却が53対47の僅差で承認された。今後は円滑に承認が進むかは不透明だ。トランプ氏がサウジを擁護すれば、武器輸出の停止論が勢いづく公算が大きい。

サウジは米国から購入した軍事装備品をイエメンでの軍事介入に使用している。武器輸出は米・サウジの軍事協力の大きな比重を占めており、輸出停止は同盟の揺らぎにつながる公算が大きい。トランプ氏は米国が輸出を停止すれば、サウジはロシアや中国から武器を調達すると指摘する。

議会では以前からトランプ政権のサウジ政策に不満がたまっていた。サウジが8月にイエメンでの空爆で多数の民間人の死傷者を出しても、トランプ政権はサウジを擁護した。この時も議会ではサウジへの武器輸出を制限すべきだとの声があがっていた。

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