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ボクシング興行変える DANGAN社長・古沢将太(下)

10月7日、古沢将太は横浜アリーナにいた。井上尚弥の1ラウンドKOに沸き返る1万人の観衆に交じり、古沢も興奮を隠せなかった。怪物の圧倒的強さもさることながら、心を奪われたのが会場の演出だ。

白い光線が縦横に美しく走り、リングを闘牛場よろしく浮かび上がらせる。欧州のプロモーターが手掛けた荘厳で非日常的な世界観は、DANGANの興行改革を考えている古沢に大きな刺激を与えた。

「未開拓」に魅力 遠慮せず前へ

「これまではファンが見たいカードの実現にまい進してきたけど、そろそろ次の段階に取りかかりたいんです」。テレビ放映される世界戦を除けば、ボクシング興行の演出は手つかずといっていい状態だ。DANGANも例外ではない。「一番大事なのはもちろん試合だけど、初めてボクシングを見に来た人や女性客をリピーターにするにはイベント自体の質を上げないといけない」。勉強の意味で派手な演出にたけたプロレスや他の格闘技のイベントにも足を運ぶ。

そもそも、古沢が「転職先」としてボクシング界を選んだのも、そうした未成熟な部分に可能性を感じたからだった。学生時代からスポーツビジネスに関心があり、プロ野球球団でインターンもした。卒業後は投資銀行に就職するも「長く働くつもりはなかった」。転職を考え始めた頃、なぜか頭に浮かんだのはプロ野球でもJリーグでもなく、中学生の頃からテレビで見てきたボクシングだった。

「野球やサッカーはマーケティングとかファンサービスとか、やることが大体想像できた。それに比べて、ボクシングは未開拓な感じがして逆にワクワクしたんです」。昔から周りがやっているのと違う道を選びたがるタイプだった。

ネット記事でDANGANの存在を知り、創業者の瀬端幸男に直談判。後楽園ホールで興行の運営を手伝うところから始め、1年後、実質的なプロモーターとして興行を任されるようになった。以来、ネットでの会員制動画配信サービスも立ち上げたが、収入はほぼチケット販売に頼っている。目下のところ、スポンサーがいないのが悩みで「DANGANのブランディングをやらないと」。

長らくの愛読書に「エスキモーに氷を売る」という本がある。著者は米プロバスケットNBAの弱小チームの社長で、様々な手法を企てて客席を満杯にしていくマーケティング本だ。

「この1、2年で覚悟が決まりました。この世界では若造だけど、もう遠慮しないでやっていきます」=敬称略

(山口大介)

〔日本経済新聞夕刊10月16日掲載〕

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