日本版IoT、現場発に活路 シーテック報道陣に公開

2018/10/15 18:51
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あらゆるモノがネットにつながる「IoT」が、店舗から工場まで様々な現場に広がっている。米グーグルのような巨大な「プラットフォーマー」が不在の日本版IoTは、現場発に活路を見いだす。巨大なデータを背景に世界を席巻する海外IT(情報技術)大手に対抗し、データの時代を生き抜けるか。「ガラパゴス化」するリスクもはらみつつ、模索は続いている。

ローソンは「未来のコンビニ」を出展する(15日、千葉市)

シーテックは銀行など異業種からの参加も目立つ(15日、千葉市)

15日に幕張メッセ(千葉市)でメディア公開が始まった「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」。家電やIT(情報技術)が中心だったシーテックは、2016年にIoT技術が集まる見本市として生まれ変わった。銀行や観光など年々参加業種は広がり、今年はローソンやライオンも初めて参画する。

アプリをかざして商品とともにゲートを通るだけで決済完了――。ローソンが25年を想定して展示した「未来のコンビニ」では、全商品に貼り付けた電子タグを中核に、1人でも終日営業できるような大幅な省人化を実現する。購入商品と消費者のひもづけに加え、リアルタイムの購買情報取得で商品の補充や廃棄ロス削減にもつなげる。

人手不足対策に加え、購買情報や顔画像などから利用者の健康状態に沿った商品の提案など新サービスの創出にもつなげる。「店舗を無人化するのではなく、有人店舗の強みを生かす」(牧野国嗣理事執行役員)。

工作機械大手のファナックは、NTTなどと組んだ工場向けIoT基盤「フィールドシステム」の展開を広げる。17年に始めた国内では協業先が500社を超え、工場内の様々な機器を連携させるシステムとして普及を狙う。導入や引き合い件数も100社以上で、19年に北米展開も始める。

LIXILは住宅建材や家電をつなげるシステムを展開し、スマートフォン(スマホ)アプリで電動シャッターの開閉やエアコンなどの遠隔操作を実現。竹中工務店は建設現場での通信速度を約6倍に向上させる技術などを展示する。

総務省の「情報通信白書」によると、IoT機器は17年に世界で274億台で、20年には5割増の400億台まで増える見通し。17年ではスマートフォン(スマホ)など通信分野が54%を占めるが、20年までに家電などの家庭内や機械など工場にも広がり、通信分野の比率は5割を切る。

対応業種の広がりを示すように展示会では小売りや建設、インフラ、工場などIoTを活用する現場の動きが目立つ。多様な業種がそれぞれの現場に合ったIoTのあり方を模索するのは、日本版IoT開発を象徴している。

東京大学の藤本隆宏教授は「日本は高度な擦り合わせによる製造現場の強みを生かせば戦える」と指摘する。現場の理解が深い企業が自ら必要なデータをIoT機器を通じて取得し、競争力を高めるカイゼンや省力化につなげる。三菱電機は若いITエンジニアを現場に派遣し「リアル(現場)とバーチャル(ネット)の両方を理解する人材を育てる」(柵山正樹会長)と現場を重視する。

ドイツ産業連盟のディーター・ケンプ会長も「高い技術的専門性や強い現場を持つ日独は、デジタル化のリーディング市場だ」と意気込む。

ただ日本版IoTが現場発を重視するのは、データを束ねて運用するプラットフォーマー不在の裏返しともいえる。日本勢ではファナックと三菱電機、DMG森精機日立製作所がデータ共有に乗り出したばかり。圧倒的なデータを持つ欧米勢に後れを取っている。

IT大手は「現場」に浸食し始めている。米アマゾン・ドット・コムはレジなしのコンビニ「アマゾン・ゴー」を拡充する方針とされる。

同じく家電見本市から脱却した米CESや独IFAではグーグルやアマゾンの姿が目立ったが、シーテックの会場に姿はない。参加国・地域は日本を含めて20カ国・地域にとどまり、CESの160、IFAの49には遠く及ばない。

データを牛耳る企業なき展示会で示された日本のIoT戦略は、いつしか世界のルール外にいる可能性も否定できない。世界を巻き込んだ戦略へと昇華できるかが、生き残りのカギを握る。

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