2018年10月20日(土)

新興国、安定成長曲がり角 貿易戦争の余波大きく

経済
東南アジア
2018/10/13 1:12
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【ヌサドゥア(バリ島)=中野貴司、鈴木淳】12日まで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、新興国経済も議論された。通貨不安に見舞われたアルゼンチンやトルコに加え、東南アジアなどでも成長率の減速が鮮明になっている。米国の利上げや貿易戦争、原油高など新興国経済の逆風は多く、世界経済の不安材料だ。

外資系製造業の生産拠点が集まり、輸出主導で高成長が続いてきたマレーシアの輸出が8月、前年同月比0.3%減と急減速した。主因の一つは、主要輸出先の米国向けの落ち込みだ。国際通貨基金(IMF)は9日、輸出減速を踏まえ、マレーシアの2018年の成長率を4.7%と、4月時点に比べ0.6ポイント引き下げた。

最大の貿易相手である中国の経済拡大の恩恵を受け、堅調な成長を続けてきた東南アジア。これまで先行きが不安視されていたのは通貨ルピアが20年ぶりの安値圏に沈むインドネシアや、インフレが止まらないフィリピンにとどまっていた。

ここにきて減速の予測が域内の新興国全体に広がるのは、中国と米国間の貿易戦争が長引き、サプライチェーン(供給網)の一角を占める東南アジアへの影響を懸念する声が強まっているためだ。IMFのチャンヨン・リー・アジア太平洋担当ディレクターは12日、年次総会が開かれたバリ島で、「アジアの国内総生産(GDP)は貿易戦争の拡大で最大0.9%押し下げられる可能性がある」と指摘した。

新興国の経済の懸念材料は貿易戦争だけではない。ブラジル中央銀行のゴールドファイン総裁は11日、「先進国で今後も金融正常化が進むと、新興国は影響を受けざるをえない」と懸念を示した。通貨レアルは9月に対ドルで過去最安値を記録しており、IMFの予測では18年の成長率も1%台に低迷する見通しだ。 「財政歳出を減らし、19年に基礎的財政収支を黒字化したい」。IMFの支援を仰ぎ、新興国の経済不安の象徴となっているアルゼンチンはG20会議で早期の健全化を約束した。ただ、世界経済の変調で、こうした正攻法的な再建策を実行する時間的な猶予は少なくなっている。

IMFと世界銀行が今年の年次総会の場所にインドネシアを選んだのは、アジア通貨危機から約20年がたち、アジア経済の成長を世界に印象づける狙いだった。しかしバリ島での議論は貿易戦争などへの懸念が中心で、世界経済の負の側面を象徴する会議となった。

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