九電 13日に太陽光制御 発電業者に停止要請、国内初

九州電力は12日、九州の太陽光発電事業者に13日の日中に一時稼働を止めるよう求めると発表した。気温の低下で電力需要が減り、電力が余って供給が不安定になるのを防ぐ。国は再生可能エネルギーの普及を目指してきたが、発電分を生かせないことになる。今後も増える再生エネをうまく活用するには、広域で電力を共有する仕組みや蓄電の普及が必要になる。

12日夕、九電本社ビル(福岡市)で会見した和仁寛・系統運用部長は「13日は晴天で太陽光発電の量が増える。ご理解とご協力をお願いしたい」と語った。再生エネ事業者に稼働停止を求める「出力制御」を広域で実施するのは国内で初めてだ。
九電は13日に太陽光が最も多く発電する時間帯の供給量を1293万キロワット、この時間帯の需要を828万キロワットと見込む。196万キロワットを域外に送電し、226万キロワットを揚水式発電や蓄電にまわしても、43万キロワット余る。この分を午前9時から午後4時まで太陽光を止めて抑える。当日朝の気象データに基づいて最終的に決める。
九電は再生エネの出力を専用システムで管理している。13日の再生エネ出力を予測し、制御量を計算。発電規模を考慮して対象事業者を選び、遠隔制御する。
日照条件がいい九州は太陽光発電の設置が進み、九電管内の太陽光発電の出力は807万キロワット(8月末時点)と一時的に需要の8割以上を占める日もあった。9月下旬までに原子力発電所4基が営業運転し、その出力は計414万キロワット程度にのぼる。
電力は需要と供給が同じ量でなければ周波数が乱れ、最悪の場合、大規模停電が起きる。北海道地震では火力発電の停止で供給力が急減し、ほぼ全域が停電する「ブラックアウト」が発生したが、九電は供給力の増大に悩んできた。
九電は余った電力の一部を本州に融通したり、火力発電の出力を抑制したりして需給バランスを調整してきた。しかし、涼しくなって冷房需要が落ち、出力を制御しなければバランスを取るのが難しくなってきた。
出力制御は今後、四国や中国などほかの地域でも実施される可能性がある。西日本中心に大規模太陽光発電施設(メガソーラー)は増え続け、来年以降のゴールデンウイークやシルバーウイーク前後に供給過剰になる懸念が高まっているためだ。
四国電力では5月に再生エネの発電量が一時、需要を上回る事態が発生した。火力発電の出力を抑え、揚水式発電を動かすことで乗り切ったものの、電力関係者は「次は四国」との見方が強い。
出力制御では発電した電力を送電線に流せず、発電事業者の収益が目減りする。九電管内の場合、15年1月以降に接続承諾した事業者の損失は補償されない。
余剰電力を他地域に送る連系線の容量も限界がある。再生エネの変動を吸収できる安価な蓄電池の開発、連系線の増強を含む地域を越えた需給調整体制の拡充なども求められる。
アイルランドや英国、ドイツなどでは出力制御がすでに実施されている。中には事業者に補償金を支払うケースもある。
国が再生エネの「主力電源化」を掲げるなか、東京理科大学の橘川武郎教授は「短期的には出力制御は仕方ないが、いつまでも同じ状況が続くのは問題だ」と指摘する。太陽光発電協会の増川武昭事務局長は「出力制御の最小化を進めてほしい」と話している。
一方で「全体で見たら影響は軽微」(発電事業者)と冷静に受けとめる声もある。出力制御の可能性が高いのは春と秋のそれぞれ1カ月間の休日に限られるためだ。発電所ごとに順番に止めるため、影響額は年間の1%程度にとどまる。