ビッグデータの理想と現実(6) 個人の権利 侵害の懸念
佐藤一郎 国立情報学研究所副所長

2018/10/15 2:00
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データの利活用で常に有望視されているのが個人に関するデータ、つまりパーソナルデータです。ネット広告の閲覧履歴から医療情報まで様々なパーソナルデータが収集・利用されています。小売業でも商品ごとの日販数や週販数の分析だけでなく、電子マネーやポイントカードによって顧客を識別し、個々の顧客の購入履歴に基づくマーケティングが求められています。

パーソナルデータの利活用はビジネスに直結する一方、個人の権利・利益を侵害する懸念もあります。例えば、ある個人の購買履歴にかつらとがんに関する書籍の購入記録があれば、その人は抗がん剤を服用している可能性があると推測されるなど、プライバシー侵害を含めて思わぬトラブルを引き起こしかねません。

また、パーソナルデータの中でも、どこの誰かがわかるデータ(外部情報との照合を含む)は個人情報保護法における個人情報として位置づけられ、その利活用には法的規制が加わります。ここで注意すべきは、法的に保護が定められた個人情報と比較して、プライバシー情報は範囲が不明確であり、さらに個人情報とプライバシー情報はある程度重なりますが、前者ではないが後者に該当するパーソナルデータがありえて、そのデータの利活用は個人と事業者の間でトラブルになりやすいことです。

こうした法的な制約を避けるためにパーソナルデータを加工する、例えば氏名を削除したり、生年月日を5歳刻みの年齢に変えたりして、個人の特定可能性を排除する方法があります。改正個人情報保護法では、匿名加工情報と呼ばれる、個人情報から個人の特定可能性を低減するように加工したデータに関する同意なしの第三者提供の枠組みが導入されました(筆者は内閣官房パーソナルデータ検討会の技術検討WG主査として制度設計に関与)。

しかし、こうした個人情報の加工は個人の特定可能性を排除または低減しますが、利活用に資する情報も減ることになります。このため第三者提供や目的外利用においては、匿名加工情報を含む加工よりも、個人本人から同意をとった方が利活用の範囲が広がるのが現実です。

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