サイバー流人材育成術 「新卒社長」で急成長を促す

2018/10/27 6:30
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サイバーエージェントの藤田晋社長。新卒2年目で起業した、元祖「新卒社長」

サイバーエージェントの藤田晋社長。新卒2年目で起業した、元祖「新卒社長」

インターネット広告事業などを手がけるサイバーエージェントは、スマホゲームや「AbemaTV」などの新規事業に次々と挑戦し、成長し続けている。その原動力となるのが新規事業を生み出し、事業化する「新卒社長」の仕組みだ。「新卒社長」とは、入社数年目までの社員を子会社の社長に登用する「抜てき人事」。社員数が500人程度になった2003年に初めて新卒入社の社員に子会社の社長を任せたことから始まった。これまで延べ50人の新卒社長を抜てきしている。

「『新卒の能力を引き出し成長させるには、子会社社長のポジションを与えること』というのが、社長の藤田の持論。給料や福利厚生を通じて『安心』を社員に与えることも会社の役目ですが、ベンチャースピリットを持った意欲ある若手社員を応援し『チャレンジ』する場を与えることも同様に大事で、社員の成長や満足度にもつながる。その施策の1つが『新卒社長』です」(広報の上村嗣美さん)

事業拡大に成功している主な新卒社長

事業拡大に成功している主な新卒社長

選抜された社員と役員が、新規事業や人事制度などを1泊2日の合宿で議論する「あした会議」や、「スタートアップチャレンジ」といったビジネスプランコンテストなどから、新規事業とともに新卒社長が生まれる。アプリ制作の実績が認められた内定者が、学生の時に社長に就任した例もある。

■撤退基準とセカンドチャンス

法務や経理、広報といったバックオフィスは本社がサポートするため、事業化が決まれば新会社の設立はスピーディーだ。本社の役員が1人取締役に入るほか、周りの先輩に相談しやすい社風があり、歴代の「新卒社長」の失敗談も豊富なため、新卒社長が経営判断していくための環境が整っている。

とはいえ、自身の給与額から予算策定、採用といったすべてを最終決断するのは新卒社長。「成功は自信になり、失敗は学びを生む。社長という責任や重圧を背負って『決断経験』を重ねることが、圧倒的な成長につながります」

その決断の評価基準となるのが、「スタートアップJJJ」制度だ。原則設立2年以内で収益化していない事業を対象に、想定される時価総額別に事業をランク分けし、「6半期連続で一番下のランクから上がれないと撤退する」などの「事業撤退ルール」を明確にしている。将来性や採算性がない中で赤字を膨らませない目的もある。

また月1回、子会社社長たちが本社の役員に施策のプレゼンや事業進捗を確認する会議は、軌道修正をするチェック機能を果たす。

創業5年で撤退する事業は約50%程度。だが、同社は「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」という方針を掲げ、事業から撤退した新卒社長には懲罰人事ではなく、違う部門で再挑戦できる場を与えている。「リスクを取って挑む社員や、次に生かせる失敗経験を評価する風土があり、セカンドチャンスを得た新卒社長は社内の多くの部署から引く手あまたです。また、セカンドチャンスを与えるというセーフティーネットがあることで、社員も失敗を恐れずにチャンレンジできます」(上村さん)

(ライター 高島三幸、写真 北山宏一)

[日経ビジネスアソシエ 2018年8月号の記事を再構成]

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