2018年10月17日(水)

小豆島の実験野菜工場 高効率の生産に海外からも注目
香川県と理研、歩留まり9割超

中国・四国
ビジネス
2018/10/12 5:00
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理化学研究所(理研)の設計で香川県が昨年12月、小豆島に開設した実験野菜工場が予想を上回る成果を上げている。テスト品種として作っている低カリウムレタスの歩留まりが95%に達し、シンガポールなど海外からも複数の問い合わせが来ているという。設備や生産レシピのパッケージを国内外に売るなど、様々なビジネス展開の可能性が開けてきた。

8列6段で、日に500株を生産する(小豆島の土庄町)

工場の名称は「土庄町植物栽培システム研究所」。小豆島の土庄町が運営している。国の地方創生推進交付金を活用し、静岡県の施設と機能を分担する形で造られた。

静岡県の施設は広さ1メートル×1メートル、高さ2メートルのボックスを多数配置し、様々な作物の生産レシピを短期間で開発する。一方、小豆島は広さが23.1メートル×13.5メートル、高さが4.2メートルで、いわば実験室で作った基礎レシピを大きな空間で実用化するための役割を担う。

大学の研究施設などで作ったレシピを実地で運用すると7割が赤字になると言われる。歩留まりの向上とコストの管理がうまくいかないためで、小豆島の工場は低カリウムレタスの水耕栽培を題材に、この2点の解決を目指している。

毎日500株を収穫する。理研がそれまでの研究成果を踏まえて設計したため当初から室内の温度差などがうまくコントロールでき、9割程度の歩留まりがあった。最近さらに向上し、今月は安定して95%の歩留まり成績を上げている。実際の工場ではちょっとした管理ミスで6~7割に落ちてしまうといい、当初の想定を超える良好な成績が出ている。

貴重なのはこの成績を、膨大なデータを取りながら出している点だ。室温や湿度、発光ダイオード(LED)の照度、二酸化炭素(CO2)の濃度、水耕栽培の水の流れのスピード、水の温度、ペーハー値、栄養分の濃度、気温など外部環境との関係といった様々な要素をコントロールしながら歩留まりを高めており、施設として再現可能な生産パッケージができつつある。

また、運営は4人と少人数でできており、空調の管理などと合わせて、採算が取れる「そこそこコストで管理できることも分かってきた」(理研の和田智之氏)。

実験が順調に進んでいることで可能性が大きく開けてきた。

まずはレタスの次の作物生産パッケージの開発。工場栽培は低コストでできても、普通の農地で作るよりは高くなるので、まずは価格を高く設定できる腎臓病患者のための低カリウムレタスを題材にした経緯がある。今後は香川ならではの、付加価値の高い機能性作物が視野に入る。

海外展開はまだ先の話になりそうだが、農地面積が少なかったり環境が過酷だったりでそもそも作物が育たない国や地域が関心を示しているようだ。プラントとして、設備と管理ノウハウをパッケージで輸出し、それに地元企業が絡むといったことも考えられる。

実際にはこれから香川県と理研、小豆島の土庄町で、静岡県との連携も含め、様々なビジネス化のモデルを検討する。

地元では生産中の低カリウムレタスが売れていない点をとらえ「うまくいってないのでは」という声もあるというが、的外れ。育てようによっては大きく化ける研究成果が早くも上がり、知恵の絞りがいがある局面にきている。(深田武志)

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