2019年6月17日(月)

松葉づえ安全に、高専生が手作りロボで見守り
高専に任せろ!2018

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
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2018/10/12 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

和歌山県御坊市にある和歌山工業高等専門学校(和歌山高専)。校舎や学生寮からは紺碧(ぺき)の太平洋に沈む美しい夕日が眺められる。この景色を学生時代の一番の思い出として巣立っていくエンジニアも多い。エンジニアの卵たちが繰り広げる「ものづくり教育」の現場は、低予算でユニーク。まさに高専らしい学舎だ。

■ルンバやキネクト活用

松葉づえの安全な利用について研究する津田准教授(右)と杉山さん

松葉づえの安全な利用について研究する津田准教授(右)と杉山さん

スチールの学習机をひっくり返したような3段の棚が、家庭用掃除ロボット「ルンバ」の上に乗っかっている。2段目にはマイクロソフトのゲーム機Xboxの周辺機器「キネクト」が置かれ、さらに最上段のノートパソコンにつながる。

高専生が「ソーシャルドクター」となって社会課題を解決するケースが増えているが、この手作り感満載の物体が活躍するのは医療・福祉分野。松葉づえで歩行する人のための「見守り・付き添いロボット」だ。ルンバの動力により、松葉づえの歩行者の少し前を先導して進む。歩行者の動作はキネクトのカメラとモーションキャプチャーセンサーが計測。パソコンで身体加速度を解析し、歩行者の状況を把握する仕組みだ。パソコンの画面には「歩幅が小さいです」「足をしっかり上げましょう」などと歩行者をサポートする文章が現れる。

技術的な基盤は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」と動作解析技術の組み合わせだ。ただしルンバとキネクトを合算しても総額10万円にはならない。研究メンバーの一人、専攻科2年の杉山僚彦さん(22)は「身近なものを組み合わせることにこだわりました」と胸を張る。従来の歩行動作解析は、松葉づえ歩行者の身体にセンサーを取り付けたり、複数のカメラを駆使したモーションキャプチャーを使ったりするなど大がかりで、歩行者にも負担が重かった。

試行錯誤を繰り返すうちに、大腿部の動作から身体加速度を推定できることが判明。そこから軽量で扱いやすいXboxのキネクトで計測するアイデアに行き着いた。

実はキネクトは高専ではよく知られた頼もしい相棒だ。これまでも「上肢リハビリ支援装置の開発」(秋田工業高等専門学校)や「ジェスチャー動作支援ツールの開発」(舞鶴工業高等専門学校)などで使われている。

ただし課題はまだあった。キネクトは計測領域が狭く、据え置きの状態では歩行者の正確な動作解析ができなかったのだ。そこで一般家庭にも浸透しているルンバを移動ロボットに見立て、キネクトを搭載して歩行者を先導する方法を編み出した。ルンバも高専生の間では「掃除をさせるだけではもったいない」と、その攻略法や活用術などがよく話題となる。開発メンバーを指導したのは知能機械工学科の津田尚明准教授。ロボット技術で生活を便利にする研究に取り組んでいる。きっかけは、足を負傷した同僚が漏らした言葉だった。「松葉づえの使い方が分からない」

2009年のことだ。確かに病院で松葉づえの使い方を丁寧にレクチャーすることは少ない。慣れない使用者が転倒し、さらに負傷することもある。「ならば松葉づえの歩行を解析しよう」と思い至った。開発後は、和歌山県立医科大学(和歌山市)と協力して実証実験にも取り組んだ。

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