2018年10月17日(水)

第8期将棋リコー杯女流王座戦 五番勝負 23日開幕

囲碁・将棋
2018/10/13 2:00
保存
共有
印刷
その他

里見香奈女流王座(26)に清水市代女流六段(49)が挑戦する将棋の第8期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)五番勝負が23日開幕する。里見女流王座は3連覇、通算4期目を狙う。女性初の「棋士」を目指して戦ってきた奨励会をこの春退会したが、四冠を持つ若き第一人者だ。タイトル挑戦の最年長記録を塗り替えた清水女流六段は歴代最多のタイトル43期を誇る。女流棋界の歴史をつくってきた2人の頂点をかけた戦いが始まる。

■里見香奈女流王座、3連覇を目指す 力を発揮し楽しむのみ

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森ケイ二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段。18年、26歳で奨励会退会。女流タイトル31期。現在は女流名人、女流王将、倉敷藤花を併せ持つ女流四冠で、女流五段。

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森ケイ二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段。18年、26歳で奨励会退会。女流タイトル31期。現在は女流名人、女流王将、倉敷藤花を併せ持つ女流四冠で、女流五段。

清水さんが日本将棋連盟の常務理事の仕事をしながら勝ち上がったのは、本当のところは私にはわからないけれど、相当大変なことだと思います。ふだんは優しく、立ち居振る舞いや所作が美しい。まねしようと思ってできることではなく、尊敬しています。

この1年でいろいろ環境が変わりました。奨励会は3月、26歳の年齢制限で退会となり、しばらく気持ちの整理がつきませんでした。実家で気分転換しましたが6月に女流王位のタイトルを失いました。失冠は自分の実力なので仕方ないけれど、第1局でこれまでしたことがないようなミスがありました。念をいれて確認した上だったので「なんで?」という気分。振り返るとすごく不思議です。

奨励会を退会して女流棋士に専念することになり、女流枠で一般の棋戦に出場して、男性棋士と指せるようになりました。これまで棋譜を並べて勉強してきた先生方と、実際に盤を挟んで将棋が指せる。感想戦では、自分がどれぐらい正確に読めていたか、形勢判断ができていたかがよくわかります。

勝ちにこだわるのではなく、純粋に自分の力を発揮することだけを考えて指すと、終わった後が楽しい。今は将棋が本当に楽しいです。だから相手が誰なのかは関係ありません。清水さんは、若くて勢いがある女流棋士に勝って挑戦者になりましたが、私は自分の力を出し切り、それと同時に将棋を楽しみたいです。

■清水市代女流六段 49歳の最年長挑戦、細工せず経験を盤上に

しみず・いちよ 1969年生まれ。東京都東村山市出身。故・高柳敏夫名誉九段門下。85年女流2級、2000年女流六段。タイトル43期は歴代最多。女流名人、女流王将、女流王位、倉敷藤花の4タイトルで永世(クイーン)称号を持つ。

しみず・いちよ 1969年生まれ。東京都東村山市出身。故・高柳敏夫名誉九段門下。85年女流2級、2000年女流六段。タイトル43期は歴代最多。女流名人、女流王将、女流王位、倉敷藤花の4タイトルで永世(クイーン)称号を持つ。

久しぶりのタイトル戦になります。トーナメントはどの対局も大変でしたが、挑戦者決定戦も久しぶりでうれしかったです。形勢判断がつきにくく難しい将棋で、盤上に集中してあっという間の一日。苦しくも楽しい一局でした。

最年長挑戦は意識にありませんでしたが、同世代に応援されて励みになります。タイトル戦に臨む気持ちも、10代、20代、30代とは全く違います。タイトル戦が日常ではなくなり、新鮮味があって楽しみです。

昨年5月に将棋連盟の常務理事になり、やるべきことが山積みです。将棋との向き合い方も変わりました。それまではいわば引き算。ムダなことは生活からそぎ落とし、捨てていました。

今は足し算です。自分とは全く違う世界の方々と会う機会が増え、すべてを将棋に生かそうと考えています。少ない時間を大切にするようになり、一局にかける思いも変わりました。集中力や充実感につながっているのかもしれません。

里見さんは本当にかわいい後輩、将棋界の宝です。夢と目標に向かってすべてをかけているので、自分も一緒に熱くなってしまいます。常務理事としてタイトル戦に帯同し、里見さんの対局を間近で見てきました。その最強のタイトルホルダーと指せるだけでうれしい。変な小細工や作戦は通用しません。これまで培ってきた経験を盤上に全て出し、チャンスをつかみたいです。

■展望を聞く 里見、抜群の安定感 清水の勢いに期待

五番勝負の展望を関東奨励会幹事を務める近藤正和六段(47)と日本将棋連盟の女流棋士会副会長で関西所属の村田智穂女流二段(34)に聞いた。=文中一部敬称略

――清水が挑戦者に名乗りを上げた。

村田 対局以外の用事でよく顔を合わせる。連盟の常務理事としてかなり忙しいのは確かだろう。ほとんど勉強する時間がない中、勢いのある若手を軒並み下してきたのだから、すごい。女流棋士会会長時代も含めて、里見らをサポートする立場にいた人が、今度は挑戦者として表舞台に立つ。カッコいいと思う。

近藤 初の女性理事として期待も大きく、大変だとは思うが、佐藤康光会長、森内俊之専務理事といった超一流棋士と一緒に仕事をすることで刺激を受けている面もある。2次予選で実力者の中村真梨花女流三段を下したのが大きく、挑戦者決定戦では奨励会有段者並みの力を持つ伊藤女流二段に勝った。かつて一時代を築いた人が、ここにきて再び勢いに乗ってきた。

――里見の調子は?

近藤正和六段

近藤正和六段

近藤 5~6月の女流王位戦でタイトルを失ったのは正直、意外だった。3月、女性初のプロ棋士を目指していた奨励会を年齢制限で退会し、少し気落ちした面もあったのかもしれない。その後は男性棋士に五分に近い成績を挙げ、一時的なものだったのだろう。

村田 5月の関西女流棋士フェスタでは、さっぱりした明るい表情を見せ、トークでもしっかり笑いを取っていた。奨励会にいたころの追い詰められた余裕のない感じとは大違いで、切り替えはできている。

――過去の対戦成績は里見の24勝14敗。

近藤 2人の対戦は2005年に始まる。最初は清水が寄せ付けなかったが、08年以降は里見が力をつけ清水からタイトルを奪う形で世代交代が進み、対戦成績にも差がついた。しかし内容的には拮抗している。

――どんな将棋になるか。

村田智穂女流二段

村田智穂女流二段

村田 過去の対戦と同様、里見の振り飛車、清水の居飛車という対抗形になるのは間違いない。どちらも攻め将棋で穴熊に囲うようなことはしないだろう。里見が中飛車、三間飛車、向かい飛車のどこに飛車を振るか。先手番なら優秀といわれる先手中飛車を採用する可能性は高い。

近藤 里見の振り飛車は独特でスピード感があるうえに時に強引な指し方もする。奨励会で鍛え上げた終盤力も相当なレベルだ。一方の清水は本格派で、急戦調の将棋を得意とするが、安定感抜群の里見の力を封じるには終盤に入る前に押さえ込んでリードしたい。そのためには序盤から何らかの工夫も必要で、挑戦者決定戦の「三手角」のような、以前にはやった戦法も使うかもしれない。

村田 奨励会では序盤の研究が進んでいる。清水としては「事前の研究の深い方が勝ち」という研究勝負には持ち込みたくないので、最新形は避けるはずだ。

――勝敗予想は?

近藤 「安定の里見」と「勢いの清水」のどちらがペースを握るか。1、2局の結果が大きく左右しそうだが、秒読みに入ってからの正確さなども考えると3―1もしくは3―2で里見の勝ちとみる。

村田 同じ大阪にいて里見の力は十分、認識しているが、今回は清水の勢いを買いたい。直近の16年の女流名人戦はフルセットのいい勝負だったので、今回ももつれるのではないか。世代交代が進むなかで憧れの先輩が戻ってくる姿を見たいという思いも込め、清水の3勝2敗と予想する。

◇ ◇ ◇

■加藤、8期連続ならず

挑戦者争いの軸とみられたのは奨励会員の西山女王(三段)と加藤初段だった。通算4期でクイーン王座まであと1期に迫る加藤初段は7期すべての五番勝負に登場した女流王座戦のエキスパートだ。この2人の前に元奨励会員の伊藤女流二段が立ちはだかった。

昨年度は4つのタイトルに挑戦したがすべて里見女流王座にはね返され、雪辱を期した。しかし、挑戦者決定戦では勢いのある若手を破って勝ち上がった清水女流六段に力及ばなかった。49歳の実力者が女流タイトル挑戦の最年長記録を塗り替え、第1期以来、7期ぶりの五番勝負出場を決めた。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報